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人形に囲まれて(178号)

カテゴリー: 家と人と暮らし | 2010.09.10 Friday

 

人形を操るウィラワン・スウェーセーラニィー先生
ウィラワン・スウェーセーラニィーさん(チェンマイ大学美術学部教授)
チェンマイ市内在住 鉄筋タウンハウス


 マイ先生ことウィラワン・スウェーセーラニィーさんの顔に見覚えがある方は多いかもしれない。チェンマイ大学美術学部が主催するほとんどの舞台、展覧会、コンサート、コンファレンスでマイ先生が流暢な英語で司会と通訳をこなす。話し方や物腰はおだやかだが人を惹きつける何かを持っている。まさに舞台に華を添えるというにふさわしい。マイ先生はチェンマイ大学美術学部で20年にわたりタイの舞踊、演劇舞台を教えるかたわら、伝統人形劇を次の世代に残したいと卒業生らとともに人形劇一座、ホビーハット・パペット・トゥループ(HobbyHut Puppet Troupe)を主宰している。

ドーイ・ステープと大学のグラウンドを一望(2階リビングからの眺め) 読書スペース(最上階)
 自宅のタウンハウスはチェンマイ大学に隣接した市内で一番古いムーバーン(集合住宅)の一角にある。それぞれ中段の階を設けているので地上階から屋上まで6フロア、6つの部屋がある。裏手の窓を開ければドーイ・ステープを背にしたチェンマイ大学のグラウンドが一望でき、サッカーやランニングにいそしむ学生の姿と歓声が飛び込んでくる。「大学では常に多くの人に囲まれているので、家では静かに過ごしたい。ここは一人には広すぎるけれど、窓を開ければ人の気配がするからさみしくはないの」というマイ先生。

リビングルーム(2階) 家中にあるたくさんの人形たち(中2階)
マイ先生はバンコクのタマサート大学で英文学を専攻、タイ演劇を副専攻する。その後、海外の奨学金を受けて米国イェール大学の演劇大学院へ進学し、本格的に演劇を学んだ。イェール大学の演劇大学院と言えばメリル・ストリープやジョディ・フォスターを輩出し、演劇やダンスの研究が盛んなことで有名だ。さらに英国ロンドン大学の東洋アフリカ研究学院へ。優雅な立ち振る舞いと流暢な英語はタイの演劇を自ら演じて研究し、長年の欧米での留学生活で培われたものだろう。

友人が書いてくれた壁の絵画(ゲストルーム) 人形のコレクション(1階)
 海外で欧米の文化を学べば学ぶほど、タイから長い間離れれば離れるほど、自分のルーツであるタイ舞踊を深く知りたい、その素晴らしさを欧米に伝えたいと思うようになったという。ロンドン大学でまとめた論文は、タイ王朝始まって以来初の海外留学を体験し、帰国後タイの演劇を国民統一の手段として使ったラーマ6世ワチラウット王についての研究だった。
 以前は自宅前に小さなサーラー(東屋)を建ててホビー・パペット・トゥループで人形劇を演じたり、子供向けのワークショップを行ったりしていた。人形劇を始めて自らデザインした人形や海外の珍しいものを集めたコレクションはまるで博物館のよう。人形に囲まれ、人形劇に情熱を燃やすマイ先生。「キャラクターを演じるためにはその性格を熟知しなくてはいけない。たくさんの人形を演じるほど、人格のデータベースが豊富になってきて、実際の人間分析にもそれが当てはまるから演劇は面白い」という。先生の魅力はたくさんの人形心理を知り尽くしたから生まれるのかもしれない。

(写真・文:野島知)

 

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