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象の病院(2) (179号)

カテゴリー: メータマンからCHANG通信(象使い) | 2010.09.25 Saturday

 

先日退院したエレファントホームの象トゥー
 ランパーンにある象の病院には、象使いでは手を施す事の出来ない専門的な治療が必要な象が多く入院している。エレファントホームの象も、下痢が長く続いていた象や、難産が予想される象など、たまにではあるがお世話になっている。
 ランパーンで治療が必要な象たちには、それぞれ耳の裏に小さなチップを埋め込むことが義務付けられている。その象の肌の色に似たカプセル錠ほどの大きさのチップが診察券替わりなのである。そのチップを使って、病院で象の登録をし、管理をしているのだ。こうしておくと、もし急病で運ばれてきてもすぐにその象のデータがわかるというわけだ。

 エレファントホームの象使いのリーダーであるブーンさんは象専門の医者ではないのだが、象使いからの信頼がとてつもなく厚い。医者なみの知識があるのかは不明なのだが、お腹の膨らみをみて「逆子」だと判断したり、乳房の張りをみて「妊娠何カ月」と断定し、それが見事に当たっているのである。並みの象使いとは違うので、多くの象使いたちは、ランパーンの象病院まで象を連れて行く前に、まずはブーンさんに診てもらいたいと考えているのだ。なので、メータマン界隈のエレファントキャンプだけではなく、メーピンエレファントキャンプやチェンダーオのトレーニングセンター、メ―ワンエレファントキャンプ、また時にはメーチェムやミャンマー近くの国境へまで、ブーンさんはどこへでもとんでいくのだ。

 これだけ象使いが信頼していたら、ランパーン象病院のスタッフもブーンさんを一目おくのは当たり前のことである。次第に、象病院の獣医師であるプリチャー先生とブーンさんは友人関係になり、毎月1〜2回はエレファントホームか象病院で会い、象について情報交換をしたり、語り合う仲になった。私も時間が合うとブーンさんについて行って、ランパーンの象病院まで出かけることもあるので、なんだかんだ月に一度はプリチャー先生と顔を合わせている。

 プリチャー先生は私を見ると、開口一番いつも決まって、「ノーンピブーン(『ブーンさんの妹』という意味)、今日はこんなドキュメンタリーを用意しているよ。一緒に観よう!」とまずテレビの前に私を座らせる。再生ボタンを押すと、私ひとりを残し、プリチャー先生とブーンさんは隅の方でひそひそと深刻な話し合いを行う。割り込んではいけない雰囲気を感じるので、私はその間、一人で象に関するドキュメンタリーを観る。しかし、退屈だ。ドキュメンタリーは象についての歴史とか興味のあるものではあるが、大体知っている事だ。新鮮さに欠けてしまい、ついつい耳をダンボにして2人の話を盗み聞きしてみる。とにかく私はテレビよりも2人の話が気になるのだ。でも、テレビの音量が大きすぎて全く聞こえては来ない。

 数ヵ月後に分かった事だが、プリチャー先生とブーンさんはエレファントホームの敷地内に象使い用の研修プログラムを作る計画を2人で練っていたらしいのだ。

エレファントホーム敷地内にある研修会場
もともと、ランパーンの象保護センターで象使いのための研修プログラムは行われていた。かなり大きな規模だが、チェンマイ市内から少し離れている所にあるため、象使いにとっては研修を受けに行きたくても気軽に象を残しては行けないのだ。一方、エレファントホームはメータマン地区にあり、そこにはエレファントキャンプが12か所もある場所だ。なので、そこで研修プログラムを設ければ、多くの象使いが研修を受けに来る事が出来るのではないかというプリチャー先生とブーンさんの計画だ。振り返れば、ここ数年象使いの知識の少なさで象が命を失っているケースが数件ある。先日、第一回研修を行ったが、100人以上の若い象使いが集まり、VTRを観て、プリチャー先生のお話に耳を傾け、質疑応答していた。まだ、研修そのものに慣れない象使いたちなので、質疑応答に関してもなんとなく積極性には欠けるが、これから少しずつ活性化されるに違いない。私も聞いていてためになる話が多くあるので、今後も楽しみである。(続く)

文・写真 なお

 

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