チェンマイ発・ちょっとディープな北タイ日本語情報誌CHAO『ちゃ〜お』は毎月10日、25日に発行。本文へスキップ

<< 「北タイの身近な野鳥」と「象使いに魅せられて」 (181号) | 最新 | ノックギンクローングレープフアタオ(182号) >>

象の病院(3) (181号)

カテゴリー: メータマンからCHANG通信(象使い) | 2010.10.25 Monday

 

義足をつけたモーシャ
 ランパーンにある象の病院には、前回お話した獣医師のプリチャー先生の他に常駐獣医師のクアトーンさんがいる。彼女はドキュメンタリー「星の子モーシャ」などに出演したこともあるので知っている人も多いのではないかと思う。
 彼女の第一印象は、まだ若いしとても小柄なので獣医師でも犬や猫などの小動物を専門にしているイメージがあり、とても象を専門にしているとは思えなかったのだが、彼女の仕事ぶりを見ていると、その印象はすぐに崩れた。クワトーンさんは毎日入院している象一頭一頭を見て回り体調管理をしているのだが、その診察ぶりはたくましく力強い。さすが象の獣医師だと思った。そして、私個人的には全ての象に話しかけ、きちんと向き合っている彼女の優しい対応が大好きである。
 そして、クワトーンさんが見習い獣医師だった頃から気にかけている象がモーシャである。世界で初めて象に義足が付けられたことで話題になった象だ。
 約4年前、モーシャはミャンマーとタイの国境でママの仕事について行った時に、地雷を踏み右前足が吹っ飛んだ。今、モーシャは4歳なのだから、まだ1歳にもなっていなかった時に地雷を踏んだことになる。ランパーン象の病院に運び込まれ、治療することになったのだが、クエアトーンさん曰く、小象のモーシャはママと離れてしまって寂しく毎日大粒の涙を流していたという。まだお母さんと一緒にいて甘えたい時期であるので当たり前のことだ。そこに近くにいた左目を治療中の象が母親代わりになり、毎日泣いているモーシャをなだめたりしながら精神的に支えていたそうだ。血の繋がっていない象同士でもこのように支えあうシーンをエレファントホームでも見てきているが実際目にすると本当に感動的である。

 今にも柵から出てきそうなわんぱくモーシャ傷はすっかり完治
 象の体重の3分の2は前足にかかるため、前足が一本しかないモーシャはこのままでは自分の体重を支えられなくなるかもしれないということで、象病院で義足を作ることになった。最初の義足は長靴の様な形でナイロン素材のものだった。最初は慣れず、履くのを嫌がったそうだが、まだ子供のモーシャはすぐに慣れ、義足を見せると嬉しそうに近付いて来るようになったという。今では、モーシャの成長に合わせて半年に一回位のペースで義足財団に作り変えてもらっているそうだ。人間と同じでずっと義足をつけているわけではなく、寝る時など必要な時以外は外している。
 モーシャは地雷を踏んだ時の大きな音を覚えているのだろう。そのトラウマでトラックなどの大きな音を聞くと、とても怯えるという。今では少しずつ慣れてきたが、初めての音に関してはとても敏感になるそうだ。
 モーシャが象病院に運ばれた時は足が無残にも切れて、皮がぶら下がっている状態だったのだが、今は健康状態も良く(少し太りすぎているが…)、傷も十分乾いて完治している。しばらく治療に専念していたこともあり、しつけがまだきちんとされていない。モーシャの象使いもこれから厳しくしつけていかないといけないが、自分が近付くと遊んでくれると勘違いをしてしまい甘えてくるのだそうだ。私たちがカメラを持って近付くと、モーシャも気付きそばに寄って来て鼻を差し出してじゃれてくる。それだけではなく、今にも柵をまたいでこちら側に来そうな勢いだ。モーシャのカメラ好きは知っていたが、私が履いていた靴にも興味津々で今にも靴だけではなく足を全部持って行かれそうな力強さに驚いた。4歳の象だと、基本的なしつけはされている象がほとんどだ。人間と遊ぶ時も力加減を調節してくれると思っていた私はモーシャのその幼さがとても愛おしいと同時に、モーシャのこれからのしつけが大変だと痛感した。
 一方、モーシャのママはターク県に戻り、仕事を続けているという。そこでの収入の一部はランパーンへモーシャの治療代として寄付されているという。先日、エレファントホームのお客様が「象って自分で稼いで食べているのよね」と感心していたが、本当にそうだなとつくづく考えさせられてしまった。(つづく)

文・写真 なお

 

メータマンからCHANG通信(象使い) | Top