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象の病院(4) (183号)

カテゴリー: メータマンからCHANG通信(象使い) | 2010.11.25 Thursday

 

 モータラ(49歳)

 象の死亡原因の一つに足の故障がある。「足の故障ぐらいで死んでしまうの?」と思う人が多いのだが、もし象が4本足で立ち上がれなくなったら、2〜3トン以上ある自分の身体を支えきれず寝たきりになるか、どこか柱などによりかかる事になる。そうすると、内臓などを圧迫し、死亡する恐れがあるのだ。そのため、ランパーンにある象の病院にいる全ての象をスタッフは24時間体制で健康管理している。

 その象の病院に10年以上いる49歳のモータラも、モーシャ(詳しくは181号を参照)と同じく地雷を踏み左前足を失った。ミャンマーとの国境には50年程前に反政府軍がばらまいた地雷がまだまだたくさん残っていて、怪我をする象、命を落とす象は未だに増え続けているそうだ。

 モータラは1999年、国境に近い木材伐採キャンプで働いているときに地雷を踏み、左前足が地面から8センチ程吹っ飛んだ。モータラの象使いであったソムワンさんといつものように仕事に出かけた際に起こった悲劇だった。ソムワンさんは当時を思い出し私にこう言った。

「僕のまわりで地雷を踏んで苦しんでいる象を何頭か見てきたが、まさかモータラがこんな目に遭うとは思っていなかったよ。僕のまわりには治療も間に合わず死んでいく象も象使いも多くいたよ。むしろモータラは助かったんだから、神様に感謝しなければいけない。」

 この言葉を聞いた当時の私は「地雷を踏む可能性が少しでもある事を知っていてモータラにこういう目にあわせたのか!」と無性に腹を立てた事もあったが、冷静に考えてみると彼一人を責めるわけにはいかないのもわかっている。モータラのような象と象使いはそういう犠牲を目の当たりにしながらも働くしかなかった当時の環境もあるのだ。そして、まだまだこういう犠牲が増え続けている事を深刻な問題として皆が考えていかなければいけないのだ。

前足は体重の3分の2を支えるため、前足が1本になってしまうということは、他の足に負担がかかりすぎる。ソムワンさんは有り金を使い果たしてもいい覚悟でランパーンの象病院にモータラを運ぶことにした。今では貫禄あるソムワンさんだが、当時はまだ20代で若かった。モータラの事が心配で心細くてたまらなかっただろう。

 時間はかかったが、手術もなんとか無事成功した。モータラの手術をするために人間約70人分の麻酔をした(ギネスブックにも登録されたと聞いた事がある)ために、なかなか目を覚まさずスタッフ一同ひやっとした時もあったという。

2.	モータラと言えば、この砂を巻き上げる動作がおなじみ

 モータラが義足をつけるようになったのは約2年前のことで、モーシャとそんなに変わらない。実は手術後、傷口が何年もふさがらず、義足を付けることができなかったのだ。そんなモータラが、初めて義足をつけたときは、年のせいなのかモーシャと違い恐る恐るという感じで、義足に体重をかけるのがこわかったのだろう。義足をつけているもののやはり左前脚をかばうような歩き方をしていた。ただ、歩行練習をした後、外に10分間のお散歩に出たときは、鼻で砂を巻き上げ嬉しそうにしていたという。

 今でも傷口はすっかり良くなったわけではなく、まだ化膿部分も残っていることからモーシャの様な完成された義足までにはたどり着いていない。モータラに近付くとあの独特な象のにおいはなく、薬品の臭いが鼻を突く。化膿部分の毎日の消毒は欠かせないのだ。朝、義足をつけて川まで水浴びに出かけるのは日課になっているようだが、義足を付けて歩く姿勢もまだまだ慣れた感じはなく、一度背骨を真上にぐっと持ち上げてからのびをするようにして後ろ足に体重をかけて歩いている。モーシャもそうなのだが、後ろ足の筋肉が異常に発達していて、前足と太さが全然違う。

早く本義足がモータラのもとに届きますようにと願ってやまない。(つづく)

 
お知らせ
1. 年末までの期間、「象さんと一緒にコームロイ♪」が一日体験以上のプログラムに組み込まれています。
2. 年末・年始で「象さんと一緒に年越し♪」を企画中です。参加人数に限りがありますので、興味のある方は早めにご連絡ください。

【メール】elephanthome@hotmail.co.jp(日本語)
【サイト】
http://ameblo.jp/elephanthome/
【電話番号】08-4489-9687

 

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