チェンマイ発・ちょっとディープな北タイ日本語情報誌CHAO『ちゃ〜お』は毎月10日、25日に発行。本文へスキップ

<< ケープムー (206号) | 最新 | ベニスズメ (207号) >>

象の餌にも農薬!? (207号)

カテゴリー: メータマンからCHANG通信(象使い) | 2011.11.25 Friday

 

象さん
 タイの野菜の農薬汚染は問題となっていて、生野菜を食べるのに少し躊躇してしまうこともあるのだが、意外なことに最近では象が食べるものにまで同じような問題が起こっている。

 ある日、象使い1日体験でお客様と一緒にいつものルートで山を登っていた。昼食場所へ向かう途中の山道で、象使いのケイ君がその異変に気付いた。そして、すぐにカレン語で他の象使いたちに何やら大声で支持をしたのだ。いつも穏やかなケイ君が眉間に皺を寄せ不機嫌そうだ。すると、他の象使いたちは自分の象に「その草は食べちゃ駄目だ! 後で美味しいバナナあげるから、少し我慢しろ!」と必死だった。  

 ケイ君はすぐに私にもタイ語で教えてくれた。「誰かがこの山に農薬をばらまいたみたいだ。これを象に食べさせたら、お腹を壊してしまうよ。食べすぎたら死んでしまうぞ」と説明してくれた。ケイ君はエレファントホームの象使いのリーダーであるブーンさんの親友で、普段は草刈りなどエレファントホームの象たちの食事面をケアしている責任者だ。この日はブーンさんが不在だったため、彼がリーダーの代行で来てくれていたのだ。


2.	向かって右側一面が農薬によって黄色くなってしまった草たち。
 確かに農薬がついた草やとうもろこしを食べた象が死んでしまったという話は毎年聞く。メータマンよりももっと山奥に行くと、少し大きい象キャンプがあるのだが、そこでは象を半分放し飼い状態でお世話している。その象キャンプからブーンさんへ「象の様子がおかしい」と電話があり、一緒に駆け付けたことがあったが、ブーンさんでも手の施しようがなく、やるせない気持ちになったのを今でも覚えている。その時の象の死因も「農薬の大量摂取」だった。 

 こういう事故はなぜか雨季によく起こる。雨季に入ると象の食べ物が少なくなるので、お腹をすかせた象たちは空腹を満たそうと、そういった農薬付きの草などを食べてしまうのだと聞いたことがある。象は鼻も良いのだし、かしこいので農薬が付いているかどうかなんて簡単にわかるのではと私は思ってしまうのだが、エレファントホームの象たちを観察していると、そうではないようだ。鼻を使って器用に食べたいものだけを選び、口に運ぶことはできるが、ほとんどの象は農薬の有無についてはわからないのか、農薬付きの草も何の躊躇もなく食べようとするのだ。普段と同じ時間に同じルートで同じ場所で草を食べるわけだから、まさかその草が毒入りだなんて考えもしないのかもしれない。野生の象との違いがここにもあるようだ。 


3.	昼食場所にて。疲れ果てた象使いたち。
 象はお客様をのせていても、自分のペースで道草をくいながらゆっくりと山道を登って行くのだが、その日は農薬に犯された草になんの疑いもなく鼻をのばしては象使いに止められて、あきらめてとぼとぼと歩きだし、すぐにまた鼻をのばしては象使いに止められて……の繰り返しで、理由もわからない象たちは愚図りだすし、象使い達は必死だし、象の上に乗っているお客様は象の進行方向が安定しないので落ちないように精一杯で景色を見ている余裕はないし……という感じで大変な1日となった。 

 次の日、ルート変更を試みたが、やはり農薬に犯されてしまった草が多くあった。これからさらにそういった地帯が広がったら象をその山に行かせることができず、象も思う存分餌を食べられないでストレスがたまるだけだ。様々なマイナス面を考えれば考えるほど、象使いたちも気が気じゃない。 

 エレファントホームのボスであるサティエンさんは村を取り仕切る地区長でもあるので、象使いたちは、これ以上山に農薬をばらまかれない対策をとってもらうように彼に訴えた。いろいろな噂はたくさんあるものの、未だに誰が農薬を大量に使用したのかは不明だが、幸いにも被害者は出ず、最悪の事態はなく一安心だ。一刻も早く草が元通りになることを願ってやまない。


(文・写真 by なお)
エレファントホームのお問い合わせ:elephanthome@hotmail.co.jp (日本語)

 

メータマンからCHANG通信(象使い) | Top