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今月のピックアップコラム クンター流カレン族生活体験

カテゴリー: 今号のピックアップ | 2014.07.25 Friday

 

今号のピックアップコラムは
チェンマイ県オムコイ郡に在住の 吉田 清さんによる「クンター流カレン族生活体験」です。
筆者のプロフィールは、
カレン族生活体験民泊小屋番頭、人任せの牛飼い、ときどき物書き。
ブログ「タイ山岳民族の村に暮らす」。
著書『「遺された者こそ喰らえ」とトォン師は言った―タイ山岳民族カレンの村で』(晶文社)
カレン族の村に住む筆者がみた、村人の暮らしや考え方がとても興味深いコラムです。
今回のコラムも村の解決方法がわかり、面白いです!




助け合い社会だけに後腐れのない解決法が必要だ。

その 村のトラブル解決法


この原稿が読者の目に触れる頃には、村の田植えもほとんど終わっていることだろう。
稲刈り、脱穀も含めた農作業はお互いの助け合いによって進められてゆく。
従って、この村ではひとりやひと家族だけで生きてゆくことなどとても不可能であり、
常々心がけて村の衆とは和を保っておく必要がある。

しかし、こんな緊密な助け合い社会の中でも、やはり揉め事は起きる。
たとえば、いつだったかこんな事件が起きた。

ある家の軒下に積んでおいた米袋のひとつが忽然と姿を消してしまったのだ。
犯人は、すぐに判明した。
間抜けなことに白昼堂々、その隣家に住む親戚のどら息子が
米袋を自宅に担ぎ込む姿が近所の人に目撃されていたのである。
村内で売れば1,350バーツほどになるのだから、立派な窃盗だ。
通常なら警察沙汰になるところだろうが、盗まれた当人はまず村長にこれを訴えた。
彼はすぐに事情聴取に走ったのだが、
犯人とされたどら息子はあくまでそれを否定する。
やむなく、村長は数人の村の世話役に声をかけ、
夜になって再び関係者を一同に集めた。
この陣容にビビったか、犯人はすぐさま盗んだ事実を認めたのだが、
村長はその裁定を盗まれた当事者に委ねたのだった。
「盗みは明らかなのだから、警察に突き出そうが、殴ろうがあなたの自由だ」と宣言したのである。
しばらく考えた当事者は苦笑しながら
「親戚だし、まだ若いのだから、米を返してくれればそれでいい。
それにしても、なんでこんな間抜けな盗み方をしたのか」と犯人に訊く。
と、犯人も苦笑しながら「親戚だから、そのうちに返すつもりだった」
と答えて大笑いとなった。
このノホホンとした問答。
その場の全員が裁定に賛同し、
書記役がノートにその旨を記した上で全員の署名を求めた。
この窃盗事件は村の笑い話になり、後腐れは一切なかったようだ。

また、こんな事件もあった。
ある中年男性が、親しい幼馴染みの女性とその亭主を相手に喧嘩沙汰を起こしてしまったのだ。
その原因は、幼馴染みのふたりが仲がいいので亭主が焼き餅を焼いて、
ありもしない不倫関係などを口汚く罵ったことにある。
その男性は右目と太腿に青痣、亭主と亭主の加勢に回った女房も手足に打撲傷という痛み分けに終わったものの
両者が村長に訴え出て、「これは大事件!」とばかり、
今度は村の衆全員が公民館に招集された。
むろん私も顔を出したのだが、両者の話をよくよく訊くと
先に手を出した男性が怒るのも無理はないと思われた。
悪いのは勝手に邪推した亭主であり、亭主の邪推を諌めもせずに木切れを持ち出して加勢に回った女房に違いない。
村長は、集まった古老たちに意見を求めたのだが、議論続出。
それぞれの姻戚関係などもからんで、なかなか結論が出ない。
亭主の一族などは、「金を払え!」と見苦しいほどにいきりたつ。
ここで、俯き加減にじっと話を聞いていた村長が顔をあげた。
「あんたが怒るのはもっともだが、理由はともかく相手の家で喧嘩沙汰を起こしたことは許されない。
だから、罰金500バーツを支払うように」
当然、言われた男性は不満をあらわにする。
亭主の一族は、ざまみろとばかり歓声をあげる。
村長、それを制して「ただし、その罰金は迷惑料として村に収めてもらい村のために有効に使うことにする」
亭主の一族は肩すかしを喰らったように唖然とし、
男性は苦笑しながらその裁定を受け入れた。
遠巻きに成り行きを見守っていた大半の村の衆から、静かな拍手が起こった。
こうなると、亭主一族も裁定に従うしかないだろう。
書記役がノートに裁定内容を記し、関係者一同の署名を促した。
署名をした以上、もうこの問題を蒸し返すことはできないのだ。
なんか、いいよなあ、このトラブル解決法。
私は妙にすっきりした顔になった男性に握手を求めて、「良かったね」とこっそりささやいた。


(キャプション)





仲良く歩かないと田んぼに落っこちるのだ、ワン!










































 

 

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