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タイの山岳民族〜はじめに〜

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

39号タイの山岳民族はじめに1 先日、私が関わっている山岳民族の子供たちのための教育支援NGO、さくらプロジェクトに協賛していただいている20名ほどの日本人の団体が、さくら寮を視察にいらっしゃった。
 一行はチェンマイの旅行会社で観光バスをチャーターしてきており、バスの中では日本語を話せる若いタイ人ガイドが、得意げに山岳民族の説明をはじめた。
「はい、みなさん、タイ北部にはたくさんの山岳民族がいますね。たとえばアカ族、リス族、メオ族、イコー族、ムスー族、カリアン族、ヤオ族、ラフ族などです」
 あれれ、ちょっとおかしいぞ。まず、このガイドはアカ族とイコー族、ラフ族とムスー族が同じ民族の異なる呼び名であることすら知らない。それだけでもすでに山岳民族に対する知識が生半可なものであることを露呈しているのだが、さらに彼は自信たっぷりに続ける。
「山岳民族たちは皆、山の高いところに住んでいます。なぜ高い山に住むのかわかりますか。なぜなら、涼しいので水浴びをしなくていいからです。なぜ山岳民族は水浴びがきらいなのかって? それは彼らが水のピー(霊)を恐れているからです。はっはっは」
 ここまでくると、事実誤認どころか、無知と偏見に満ちた差別的発言であり、人権問題である。このようなガイドはただちに資格を剥奪すべきなのだが、タイ人(タイ族)ガイドの山岳民族に対する知識はおしなべてこの程度だ。山岳民族の文化を観光スポットの目玉に挙げている北部タイの観光会社にしてこれでは、悲しい限りである。山岳民族の村を巡り歩くのが専門のトレッキング・ガイドの知識にしても相当あやしいものだ。
 ちなみに、「イコー」というのはタイ族系の民族の人々によるアカ族への呼称であり、アカ族の人たちにとっては屈辱的な蔑称である。「メオ」も他民族によるモン族の呼称であり、モン族の人々は好まない。しかし、タイの行政機関やタイ人研究者の報告書にさえ、いまだにイコー族、メオ族という呼称が使われているし、道路標識にも最近まで「イコー・サムイェーグ(アカ族の村の三叉路)」などと堂々と書かれていた。残念なことである。
39号 タイの山岳民族はじめに2 2002年4月時点での山岳民族開発支援センターの統計によれば、現在、タイには914,755人の山岳民族―タイ語では一般的に「チャウカウ」(山の人)、正式には「チャオタイ・プーカウ」(山地に住むタイ人)と呼ばれる―が住んでいる。その内訳は、カレン族438,450人、モン族151,080人、ラフ族102,371人、アカ族65,826人、ヤオ族44,017人、ティーン族42,782人、リス族37,916人、ルア族21,794人、カムー族10,519人である。ムラブリ族、パローン族などさらに少数の民族は含まれていない。
 これからこのコラムでは、独自の文化と風習をもつそれぞれの山岳民族の特徴を、毎回民族ごとに紹介していきたいと思う。

 
(39号掲載)

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