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アカ族の基礎知識

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

40号 アカ族の基礎知識1 タイの山岳民族と聞いて、たいていの人がまず最初に思い浮かべるのがアカ族ではないだろうか。赤系統の色を基調とした精細な刺繍やパッチワークの施された藍染めの上着やきゃはん、ミニスカートなど、そのインパクトの強い民族衣装は人目をひく。
 女性達は「ウチュ」(発音によって「ウシュ」と聞こえる場合もある)と呼ばれる銀のアクセサリーをちりばめたカブトのようなかぶりものをかぶっている。なぜウチュをかぶるのかをアカ族の人々に尋ねてもあまり明快な答えは返ってこない。昔からアカ族の女性はこうしてウチュをかぶってきたのだという。それは自然な答えだ。日本人だって正月になぜ門松を立てるのか正確に答えられる人は少ないのではないかと思う。年配の女性などの場合、ウチュは眠るときもはずさないから、もともと単なるファッションではなかったことは確かであろう。ウチュの形も幼少時、少女時代、そして成人後と、変わる。また、その出自や居住地域などによってウチュの形状に違いがあり、一般にウロ・アカ族、ロイミ・アカ族、パーミー・アカ族などの区別がある。
 タイ国内には約11,387世帯、65,826人のアカ族が住んでいる。273の村がある。その約87%にあたる56,955人がチェンライ県内に居住しており、アカ族はチェンライ県の山岳民族の象徴的存在でもある。
 アカ族はチベット・ビルマ語派イ語群の言葉を話し、中国でハニ(蛤尼族)、アイニー(愛尼族)など呼ばれている民族は、アカ族と同一か、もしくは近縁の民族である。私の知る限り、雲南省のタイ族自治州周辺のハニ族の多くは「アカ」を自称していた。ラオス、ミャンマーのも数多くのアカ族が住んでいる。もともとは中国南部に住んでいた一派が、ラオスやミャンマーを経由して次第にタイに南下したと言われている。タイの多くのアカ族はここ50年から100年ほどの間に移住してきた人々である。
 アカ族については、双子が生まれることはタブーであり、生まれたら即座にその赤ん坊は殺され、両親も村を追われるという風習や、好んで犬を食べるという風習などが、いささか好奇の目で喧伝されている。
 確かに双子殺しはアカ族独自の世界観と信仰に基づいて代々行われてきたが、最近では、人権団体はもとより、アニミズム信仰の保持を奨励するアカ族協会によっても、この風習だけは廃止するよう指導がなされていると聞く。犬を食べるのも事実だが、日常的にのべつ食べているというわけではなく、これも精霊に捧げる生贄という位置付けで、特定の儀礼の際によく食べられる。
40号 アカ族の基礎知識2 チェンマイのナイトバザールでも、たくさんのアカ族の女性達がみやげ物売りをしている。その多くが路上に立ったまま、商品の載った盆を肩から紐でぶら下げて歩いて売り歩いている。リス族やモン族など他の民族でこういう売り方をしている人は少ない。
 山道を歩いていると、アカ族の女性達が重い籠を背負って歩いている。畑からの帰りだろうか。歩きながら手には布をもって刺繍している。車の行き来の少ない山道だからいいものの、交通事故にあわないか心配になるほどである。ほんのちょっとのひまでさえアカ族の女性達は無駄にせず、仕事の手を休めない。それほど勤勉なのである。朝、畑に出かける時間はどの民族よりも早く、どっぽりと日が暮れてから畑から戻ってくる時間もまたどの民族よりも遅い。性格も気丈で明るい。働き者の嫁さんがほしいならアカ族を選ぶべしとは、一部の男性たちの間では、すでに定説(?)である。

(40号掲載)

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