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リス族の基礎知識

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

41号リス族の基礎知識2 世の男達はリス族には、だまされる。あの民族衣装に、である。あれを若い娘さんが着ると、みんなきれいにチャーミングンに見えてしまうのだ。だからつい、くらくらっと・・・・・・。だまされるなんて書くと詐欺みたいで聞こえが悪いが、美人の人はより美人に、それなりの人もそれなりに美しく、かっこよく見せてしまうほど、リス族の衣装はファッション・デザインとしての完成度が高いのだ。女性達も自らの衣装に高い誇りを持っている。
 いったいこのような素敵な衣装を発明したのは誰なのか。もちろんそれは特定の誰かなのではなく、長い歴史の中で少しずつ考案され、改変され、洗練されてきたのだが、一般的に、リス族の人たちの色彩感覚はとても秀逸だと思う。性格もまた派手好みではあるが。
 女性の民族衣装は、かつては藍染めによる青や紺色が主流で、それがリス族のシンボルカラーでもあったのだが、ここ数十年の間に化学染料による空色や緑色の化繊生地が好んで使われるようになった。さらに最近ではピンク色、オレンジ色、黄色、玉虫色、水玉模様、そしてサテン生地、金銀ラメ入り、蛍光色、漫画、イラスト入りなどと過激にエスカレートしてきた。こうなるとなんでもありで、もう民族衣装などといえなくなりそうだが、それでも袖の部分は赤、襟のまわりは黒、ズボンも黒といった最低限の決まりは守られており、それがリス族の民族衣装のアイデンティティーとなっている。モードに変化があるのは、まだ民族衣装が生活の中で生きている証拠でもある。
 リス族はアカ族と同じチベット・ビルマ語族イ語群に属し、中国、ミャンマー、ラオス、タイなどに住んでいる。もともとはチベット南部の山麓に住んでいたといわれるが、中国の怒江(ミャンマーではサルウィン川)に沿って南下し、100年程前からタイに移り住んできた。中国の雲南省、ミャンマーのカチン州などにも多くのリス族が住んでいる。 タイ国内にはチェンマイ県、チェンラーイ県、メーホンソン県、カンペンペット県などに153の集落があり、6,530世帯、37,916人が住んでいる(2002年4月、山岳民族開発支援センター調べ)。タイの山岳民族全体の4.14%と人口こそ少ないが、その美しい民族衣装や盛大な正月祭りの踊りなど、「華」のある文化により、アカ族と並んでタイ北部トレッキング観光の看板的な少数民族といっていいかもしれない。
 また、タイ国内に住む山岳少数民族の中では、中国文化(漢民族文化)の影響をもっとも強く受けている民族としても知られる。数の数え方や名詞などリス語のボキャブラリーの約3割は中国語からの流用といわれるし、父系制でクラン(氏族集団)としてのまとまりを重視すること、旧暦の正月を祝うこと、祖霊を祀る祭壇の形状、地床式の家、箸を使って食事することなど、漢民族と共通する文化・習慣が数多くある。
41号リス族の基礎知識1 子供が生まれると、長女にはアミマ、次女にはアレマ、三女にはアサマ、四女にはアスマなどと名づける。同様に男であれば、アベパ、アレパ、アサパといった具合で、名前を聞けばその子が何番目の娘(息子)なのかを即座に知ることができる。しかし、この命名法では、村中にアミマやアレマが氾濫し、混乱する。最近は名前をタイ風のものに、変える人が増えてきた。
 リス族はセイリー、セイヤーン、ラオミーなど、十数のクラン(氏族集団)に別れており、同じ氏族集団同士の男女は婚姻関係をもつことができない。また、結婚においては、新郎側は新婦に多額の婚資(結納金)を支払わねばならない。かつては銀貨で支払われていたが、最近は現金が使われている。この婚資が支払えないがために、独身に甘んじている男性、また、やむなく他民族の娘を嫁にもらう男性も少なくない。一方で、多額の婚資をゲットするため、日本人やファラン(欧米人)と結婚しようと目論む、ちゃっかり者のリス族の娘も最近は多いと聞く。うーん、なんだかねえ。

(41号掲載)

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