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ラフ族の基礎知識

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

42号 ラフ族の基礎知識1 バイク・トレッキングなどでラフ族の村を探すとき、タイ人に「ラフ族の村はどこですか?」と聞いても、「さてね」と首をひねるばかりであるが、「ムスーの村を探してるんですが」と聞けば、「ああ、それならあっちだよ」と教えてくれる。コン・ムアン(北部の平地タイ族)の人々はラフ族のことを「ムスー」もしくは「ムソー」と呼ぶ。「狩人」の意味だという。しかし、彼らの自称はあくまで「ラフ」である。
 ラフ族はタイ国内ではチェンライ県、チェンマイ県、ターク県などを中心に409の村があり、18,361世帯、102,371人が住んでいる。特にチェンマイ県のメーアイ郡、チェンライ県のメースアイ郡やメーコック川沿いには多くの集落がある。
 ラフ族の定義をひとことで言えば、ラフを自称し、ラフ語を母語として話す人々である。ラフ語はかつて、アカ族やリス族、ヤオ族などタイ北部に住む多くの山岳民族の間でリンガ・フランカ(共通語)としても話されていた。発音、文法ともに単純で、習得が容易なことが理由の一つであろう。
 ラフ族はたくさんの支系(サブ・グループ)に別れている。タイではラフ・ナ(黒ラフ、ラフ・ニ(赤ラフ)、ラフ・シ(黄ラフ)、ラフ・シェレなどが、よく知られたサブ・グループである。ラフ・シにはラフ・バッキオ、ラフ・バランの2種類があり、さらに小さなグループとして、ラフ・クーラオ、ラフ・プ、ラフ・ラバー、ラフ・ミチャ、ラフ・ゴ、ラフ・ベア、ラフ・ガイシなど50以上のグループに分類することもできる。サブ・グループごとに文化様式や方言に違いがあり、民族衣装やショルダーバッグのデザインも違う。女性達は「テドゥ」と呼ばれるアップリケつきのサロンを巻いている。
 他の民族ではせいぜい2つか、3つのサブ・グループにしか分岐していないのに、なぜラフ族だけがこれほど多くの支系に別れているのか。これについては、歴史学や民族学上の定説はないのだが、推測するに、ラフ族の人々の気質と行動に関係があるのではないかと思う。
42号 ラフ族の基礎知識2 とにかくこの人たち、ふだんはとても優しくて温和な性格なのだが、一面、頑固で強情なところもある。いったん村の中でなにかのっぴきならぬもめごとが生じ、議論に収拾がつかなくなると、やがて対立する2つの派閥に分裂して、どちらかの派閥は、おまえらと一緒になんか住めないとばかり、ぷいとどこかへ引っ越して行ってしまう。そして新たな集団を作る。それがまたいつか2つに分裂し・・・・・・。まるで日本の派閥政治というか、昔の学生運動のようというか、典型的なセクト主義なのである。長い歴史の過程でそうした抗争と分裂が繰り返され、それぞれが小さなサブ・グループに分かれていった結果が現在のラフ族支系の百花繚乱ではないかと、私はにらんでいる。
 では、赤ラフとか黒ラフといった、色の根拠は何なのか。これも私の知る限り、学問的な定説はない。確かにラフ・ナ(黒ラフ)の人たちは黒地を基調とした民族衣装を着ているし、ラフ・ニ(赤ラフ)の人たちの民族衣装は、袖口やうち合わせ、巻きスカートの裾が赤と決まっている。だが、ではラフ・シ(黄ラフ)は、どこが黄色なのだと聞かれると返答に窮する。また、黒ラフの人たちは赤ラフの人たちと比べ、一般的に肌が浅黒い人が多い感じがしないでもないが、じゃ黄ラフの人はみな黄疸みたいな顔をしているのかというと、そんなことはひとつもなく、おそらく人種も肌の色も名称とは無関係である。

(42号掲載)

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