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モン族の基礎知識

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

44号 モン族の基礎知識2 毎年12月から1月頃に行われる、モン族のお正月祭り(ぺエ・チャオ・モン)もまた華やかである。村の広場では、色鮮やかで細かい刺繍やアップリケを施したろうけつ染の襞スカートに、エプロン、その上にさらに荘厳な銀のアクセサリーをちりばめた若い娘たちが、若者たちと「ジュポー」と呼ばれる鞠投げ遊びをする。列をなした男女が向かい合って布製の黒い鞠を投げ合うだけのいたって単純な遊びだが、これはモン族の未婚の若者たちに公認されたお見合いというか、「フィーリングカップル」のようなものでもある。鞠を一度受けそこなうごとに、罰として自分が身に付けているアクセサリーや衣装の一部を一点、相手に渡さなければならない。夜になると男の子たちは、昼間そうして得た戦利品を、その女の子の家に返しに行く。というか、そんな名目のもとに意中の女の子の家に遊びに行くのである。そこで恋が生まれ、カップルが誕生するのである。
 かつてモン族には、正月が終わったあと、若者が友人と結託して、意中の娘を拉致してさらっていき、無理やり自分の嫁にしてしまうという、いささか乱暴な結婚の風習(略奪婚)があったが、さすがに最近では少なくなったという。しかし数年前、うちのさくら寮の女子生徒も、学期休み中にこの略奪婚によってさらわれて寮に戻ってこなくなり、退学、退寮を余儀なくされている。今は幸せに暮らしているらしいが。
 モン族のタイでは250の村に19,082世帯、151,080人が居住し(2002年山岳民族開発支援センター調べ)、チェンラーイ県、チェンマイ県、パヤオ県、メーホンソン県、ターク県、スコータイ県、ペチャブン県など、広い地域にまたがって住んでいる。自称はモン(HMONG)で、「自由」とか「独立自尊」を意味するとか。彼らの民族的性格をよく表わしている民族名である。言語はミャオーヤオ諸語に属し、ちなみにミャンマーやタイの中部に多く住むモン・クメール系の「モン族」とはまったくの別民族である。
 中国の雲南省、貴州省、四川省やベトナム、ラオス北部にも居住し、中国ではミャオ(苗族)、タイではメーオ族とも呼ばれるが、タイやラオスのモン族の人たちはメーオと呼ばれることを好まない。タイへはラオスから19世紀半ばに移住してきたと考えられている。
44号 モン族の基礎知識1 タイのモン族は、白モン族(モン・ダオ)、青モン族(モン・ジュア)という2つの支系に別れている。両者のモン語には、言葉は方言程度の違いがあるが、もっとも大きな違いは、そのファッションである。青モン族の女性の襞スカートには、モン族伝統の技術によるろうけつ染が施され、頭は丸く大きな髷を結う。髷を膨らませるために抜け毛や切り毛を集めておいて黒い薄布で包む。白モン族は、ふだんは黒か藍色のズボンをはいているが、新年など冠婚葬祭時は麻の白い襞スカートを着用し、華やかに着飾る。頭には、黒または紺色の長い布をターバンのように巻いたり、正月祭りでは、鶏のとさかのような形の、ビーズをちりばめた帽子をかぶる若い女性も見られる。
 白モン族も青モン族も、ここ数年の間に、民族衣装の色や素材が多様、かつ派手になりつつあり、これまで藍や紺といった色合いが中心だった生地が蛍光色の黄緑色などにとって代わられつつある。伝統的な藍染めがすたれ、市販の化繊布やビーズなどのアクセサリーが入手しやすくなったのも一因であろうが、私などから見ると、地上に舞い降りた宇宙人みたいで、ちょっとやりすぎじゃないの、と思いたくなるほどのパンク的色彩感覚である。まあ、いつの世も、女の子たちは、少しでも人より目立とうと派手に着飾りたいものであるのだが。

(44号掲載)

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