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山岳民族の基礎知識〜アカ族の命名法〜

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

51号 アカ族の命名法1 アカ族が日常的に使う名前(ニックネーム)の命名法は実にシンプルで、バリエーションもそれほど多くない。男の子には頭に「ア」、「ロ」、「リ」、「ザ」などをつけ、女の子には、「ア」、「ブ」、「ミ」などの接頭音をつける。たとえば男の子には、アジュ、アトゥ、ロパ、リバなどの名前があり、女の子には、アボ、ミボ、ミス、ミイェ、ミパ、ブボ、ブソーなどの名前がある。中には「ブジュ」などという、毛虫でも踏みつぶしたような名前もあれば、日本人が聞いたら少し哀れみを覚えるような「ブス」という名前もある。
 ところで、このニックネームはきわめて可変的なもので、特に女子の場合、先に述べた接頭音が年齢とともに変わることが多い。たとえば10歳ぐらいのときまで「アソ」と呼ばれていた少女が、ある時期から「ブソー」になり、結婚したら「ミソ」と呼ばれるようになったりする。
51号 アカ族の命名法2 これらニックネームとは別に、アカ族の人々は正式な名前、いわば戒名のようなものをもっている。これは祖霊崇拝のアカ族にとって非常に重要なもので、その命名の仕方は、父親の名前の一部をとって子供につける、「父子連名法」と呼ばれるものである。
 アカ族の信仰によれば、この世界を創造したのは「アポ・ミイェ」という名の創造神で、アポ・ミイェはまず、12人の精霊をこの世に創出した。その精霊とは、ムマ、ムゴ、ゴネ、ネゾ、ゾズ、ズト、トマ、マヨ、ヨネ、ネベ、ベスン、スミオといった名前である。すでにこの精霊自体が父子連名法によって命名されていることがわかる。彼らの言い伝えでは、12番目に創造された「スミオ」という精霊が、53人の人間を生み出し、その中の一人がすべてのアカ族の起源になったという。
 たとえば、チェンライのホイキレク村に住むアボジュじいさんの場合は、このスミオから数えて53代目にあたるという。彼はスミオ以来、父親の52代目までの名前をすべて暗記している。私が頼むと、彼はお経でも唱えるような口調でその52人の祖先の名前を次々と唱えていった。次のようなものだ。
「スミオ、オトル、トルズン、ズンモイェ、モイェチャ、チャティシ、ティシリ、リポベ、ポベウ、ウニュザ、ニュザツォ、ツォモウ、モウズ、ズトポ、トポモ、モホト、ホトジェ、ジェレニュ、ニュチラ、ラトブ、トブス、ブスレ、レラチ、チラネ、ラネトン、トンショマ、ショマユ、ユショ、ショチョ、チュビュ、ビュジュ、ユボ、ボロ、ネダ、ダシェ、マイェ、チシェ、イミャ、ミャソ、ウィニョ、ナジェ、ジェジョン、ニュション、ショボン、ボンチュ、チュジャ、ジャブ、ブウィ、ウィショ、アジュ、ジュシェ、シェブ」
 いわゆる「しりとり」の要領で覚えればいいので、その気になれば覚えられるのだろうが、それでもたいした記憶力である。アカ族には文字がないので、彼らは先祖代々口承による記憶力だけで先祖の名前を伝えてきたのである。
 
(51号掲載)

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