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山岳民族の基礎知識〜ラフ・ニ族の宗教〜

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

52号 ラフニ族の宗教2 ラフ族には、ラフ・ナ族、ラフ・シ族、ラフ・シェレ族など様々なサブ・グループ(支系)があり、ラフ・ニ族もそのひとつだ。ラフ・ナ族やラフ・シ族のほとんどがキリスト教に改宗しているのに対し、ラフ・ニ族の多くは今も伝統的な土着宗教を信仰している。
 ラフ・ニ族の村の中には、ホイェというお寺のような神殿のようなものが建てられている。外見は普通の住居と変わらないように見えるが、中はがらんとしていて、奥に神棚のようなものがある。ホイェは通常村の最も高いところにあり、屋根の上に白いのぼりのようなものが立てられているのが目印だ。
 村人たちは月に2度、新月と満月の日にホイェに行き、神棚に蝋燭を灯し、赤土でこねて作った泥団子のような「ミプ」や、竹で作った「クチ」や「トヒ」と呼ばれる物体を供える。新月と満月の日はラフ語で「シニ」(聖日)と呼ばれ、ラフ・ニ族の安息日にあたる。この日は農耕や外出をひかえ、ホイェの中で「グシャ」という天上の創造神に祈り、輪になって、ノと呼ばれる瓢箪笙を吹き、太鼓やシンバルを打ち鳴らして踊るのである。
 この「グシャ」といわれる神様に使える宮司のような存在が、「トボー」である。トボーは宗教的指導者であり、村人たちの道徳生活のお手本となる精神的指導者でもある。
トボーは男性のみがなる役職であるが、女性は「カソマ」と呼ばれる巫女(シャーマン)になることができる。カソマもまた重要な役職で、最高神であるグシャとラフの人々を結びつける霊媒のような役割を担っている。「ボ・ク・ヴェ」と呼ばれる独特の節回しをもった祈祷を捧げることによって、アイマという神の化身の声を聞くことができるという。
 カソマは世襲制ではなく、普通の少女とかおばさんが、ある日突然、神のお告げによってなったりする。神様からカソマになれと命じられるのだという。通常は、「ボ・ク・ヴェ」などをしてホイェで踊っているときなどに、ある種の高揚と痙攣などをともなった入神状態に陥ることで、カソマの仲間入りをする。カソマになった女性は、白かオレンジ色の特別な衣装を着て、シニの日に神殿に蝋燭を灯す。神がかり状態になったカソマが蝋燭だけの照明の中でコメツキムシのように激しくジャンプしながら踊る様は、ちょっと新興宗教的というか、カルト的な匂いを感じさせる。タラパと呼ばれる伝道師が、心霊治療や超能力めいた秘儀を行うこともある。
52号 ラフニ族の宗教1 このラフ・ニ族の宗教は20世紀の終わりごろ、ある種の民族復興ムーブメントのような現象をともなって、一時期タイ北部で急激に盛り上がったことがある。そして様々な流派や分派ができた。貧困やエイズ、そして麻薬渦など、共同体としての調和が乱れ、道徳意識が荒み、村人たちが超常的なものに救いを求めた結果かもしれない。どこの村でも、多くのにわかカソマが誕生し、神がかりになった少女たちが妖しい踊りを繰り広げていたが、ブームは去ったのか、完全に村の中の道徳律が崩壊してしまったのか、最近ちょっと廃れてきたように思う。

(52号掲載)

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