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アカ族の住居(1)

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

55号 アカ族の住居。 アカ族の住居(ニュン)は、そのほとんどが、高床式建築である。屋根材には「ウジ」(タイ語ではヤーカー)と呼ばれるイネ科のチガヤを竹の棒に編みこんで1メートルほどのパネル状のユニットにしたてたものを葺き、柱にはチークやクリの木を、ほとんど製材しない丸太のまま用いる。壁や床は竹を割ってスリットを入れ、平らにならしたもの(「カピョ」と呼ばれる)を張り付けて並べる。資材のすべてが自然の産品である。かつてアカ族の家作りは、1本も釘を使わず、はめこみや竹ひものみで建築がおこなわれたという。
 どの家も尾根筋に沿った道路側をアプローチ(玄関側)とし、コンター(等高線)と平行に屋根の棟のラインを合わせて建てられているので、集落のたたずまいは、どの村へいっても整然とした印象を受け、芸術的なまでに美しい。住居全体を覆い隠すように地上すれすれまで伸びた入り母屋式の屋根は、切妻式のリス族やラフ族の住居と違って重厚な感じがする。しかもアカ族の家には窓がないため、昼間家の中に入ると、目がなれるまではほとんど暗闇といっていいほどだ。しかし、重厚なチガヤの屋根は涼しくて、快適だ。ただしチガヤは老朽化すると雨漏りの原因となるので、1、2年に一度は葺き替えを行わなければならない。チガヤは焼き畑耕作を行ったあとの荒れ野でどこでも生えているので調達には困らないが、編むのに膨大な手間がかかるので、最近では、トタンやスレート葺きの屋根に替える人も多くなった。
56号 アカ族の住居■ アカ族の住居は、人の背丈ほどの竹の壁をはさんで男性の部屋と女性の部屋がほぼ対称型に二分されている点が、タイの他の民族の住居には見られない特徴である。
 アカ族の人が語ってくれた神話の中に、その由来が示唆されている。かつてアカ族には男性しかおらず、自分たちも妻がほしいと神様に頼んだ。神様はアカ族の男たちに、森の中に住んでいる妖精を妻に娶るようにと言った。男たちは森から妖精を連れて帰ったが、「妖精は人間ではないので、同じ部屋で寝ないように」と命令した。それ以来、アカ族では男女は別々なのであるという。
 就寝時、成人男子はかならず男性部屋で、女性は女性部屋で寝なければならない。もちろん夫婦生活の際にはこの限りではないというが、それでも男性は朝まで妻と床を共にすることはできない。
 就寝場所には明確な序列があり、家長やその妻といった年長者は壁に近い側で就寝するという決まりがある。特に配偶者を亡くした高齢者となると、一段高いベッドに寝ることができる。
 男性部屋と女性部屋の境界あたりの壁際には、先祖の霊を祭った神棚が備え付けられている。アカ族にとってもっとも重要なものだが、日本の立派な仏壇や神棚などとは違って、竹で無造作につくった一見たわいないものだ。だから、知識がない外部者が何も知らずにうっかり触れてしまったりすると、儀礼をやりなおさなければならない。以前も知り合いのカメラマンが、アカ族の家の内部を広角で撮影するために、この神棚を背もたれにしてしまった。家人は真っ青になって、ただちに先祖供養の儀礼が遂行を要求し、カメラマンはその費用一切を支払わされた。

(55号掲載)

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