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カレン族の儀礼『キーチュー』

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

57号 カレン族の儀式キーチュ2 カレン族には「キーチュー」(腕に糸を結ぶこと)と呼ばれる儀礼がある。新年の祭り「ニトソ・キーチュー」(糸結びの新年)は、モン族の正月と同じ頃、西暦の1月頃(陰暦に従う)に行われる。また、1年のいわばハーフタイムにあたる7月頃にも、「キーチュー」の儀礼がある。タイ北部では雨季に入り、畑ではちょうど稲の種まきが終わり、農作業も一段落ついた頃である。いわば、1年の後半のスタートを祝して行うお祭りである。「タムカー」という霊に豊作や家内安全を祈るのだ。
 儀礼の行われる約1週間前(新月から3日目にあたる)、村の長(祭司)の号令とともに各家でもち米を煮て酒作りが始まる。儀礼は2日間かけて行われ、最初の日の夜は、ジーコ(サッカー日本代表の監督ではない)と呼ばれる村の長の家で行われる。村の各家の家長が、自家製の焼酎を一瓶ずつ持ち寄ってジーコの家に集まり、深夜まで宴会をする。ジーコは村の創始者がなり、その後は世襲制で受け継がれていく役職だという。
 38軒の村ならば、38個の焼酎の瓶が並べられる。これを杯につぎ、順次回し飲みして、一瓶ずつ空にしていく。全部ビンが空にならないと、宴会はお開きにならない。たいていは深夜0時すぎまでかかるという。計算上はひとりにつき一瓶分がノルマということになるのだが、途中でダウンしてしまう人もいるので、あとは酒豪の人が責任をもつ。
 それぞれの酒瓶の最初の杯と最後の杯は、村の長老たちが口をつける。長老たちは杯の酒を飲む前に、必ず杯を手にしたまま、壁側を向き、縁の下のほうに向かって祈祷のような言葉を数分にわたって述べる。また何人かの長老たちはのべつ、日本の詩吟のような節まわしの歌を歌い続けている。
57号 カレン族の儀式キーチュ1 翌朝、豚をつぶし、正午頃、男達の酒飲みの儀礼が始まる。各家の家長が一堂に会して、長老が祈祷を上げ、詩吟(?)をうなり、杯を交し合うのだ。やることは前夜と基本的に同じだが、今日はこれを昼間から夜まで、村じゅうの一軒一軒を訪問して、えんえんとやり続ける。
 各家では、その家の奥さんがちょっとしたごちそうと焼酎一瓶を用意して待っている。村の長の家からはじまり、38人が一緒になって一軒ずつ立ち寄り、一瓶の焼酎を一個の杯で回し飲みしていく。一杯目の最初の一口は祭司であるジーコが、そして最後の杯の最後の一口はその家の家長が飲み干すのが決まり。もし、誤ってその家の主以外の人が最後の一口を飲み干してしまったら、その人はその晩、家に帰ることができず、その家に泊まって行かねばならないという。もし、その家にきれいな娘さんがいたら、間違えた振りをして飲み干してしまうのも一興か。
 また、その家の最後の杯をつぐとき、酒が杯にちょうど満杯に注がれている状態になったときは、その年は豊作になるが、杯の酒が満杯に満たなかったり、逆にあふれてしまった場合は、不作で食糧不足になるという占いもあるという。
 一軒の家に滞在するのは10分程度である。しかし、38軒もあるので、終わるのは日が暮れたあとである。みな酔っ払い、のんびりと、和気あいあいとした儀礼である。

(57号掲載)

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