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アカ族のブランコ祭り(1)

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

58号 アカ族のブランコ祭り。 アカ族のイェクザ・アピュロウ(俗に「ブランコ祭り」の名で知られる)の儀礼は、毎年雨期たけなわの8月の末から9月はじめにかけて行われる。アカ族の暦に従うので、毎年その日程は変わるが、十二支の牛の日(アカ族では水牛の日)に始まり、4日間続く。 この祭りは、年間を通じて何度も行われるアカ族の祖霊崇拝の儀礼のひとつにすぎないのだが、あでやかな民族衣装に身を包んだ女性たちが丘の上の巨大ブランコを揺らすというその華麗かつ勇壮な視覚イメージによって、アカ族の儀礼の中でもっとも有名なものになってしまった。ただ、毎年雨期の真っ只中に行われ、アカ族は山岳民族の中でも特に標高の高い場所に集落を作る傾向があるので、有名なお祭りのわりには、実際にこれを見物できるチャンスをえた観光客は少ないのではなかろうか。
 初日の祖先の霊を供養する儀礼に続き、ブランコを建てるのは、2日目(十二支の虎の日)である。村人たちの協力により、集落の一番高いところに、長さ10メートルほどの4本の生木で組まれたブランコが建てられる。ブランコを揺らすロープは籐など樹木の繊維を縄状に依りあわせたもので、一本しか垂らさないので、慣れないと左右にぶれて、バランスをとるのは難しい。
 まず、ズュマと呼ばれる村の祭司が儀礼を行い、最初にズュマが軽くブランコを揺らしてから、はじめて他の村人たちはブランコに乗ることができる。
 ブランコのロープの長さは7、8メートルもあり、尾根筋のてっぺんから谷側に向かって揺らすようにしつらえてあるので、かなりスリリングである。乗っている最中にブランコのロープが万一切れたら、谷底まですっ飛んでいってしまうのだ(実際、過去には落ちて亡くなったかたもあるという)。
 鳥越憲三郎の「ブランコは稲作の豊饒をイメージさせる類感呪術である」という説のほか、ブランコ祭りの由来には諸説あるが、今、アカ族の人たちに尋ねても、これはという答えは返ってこない。老人たちが断片的に記憶している神話をつなぎ合わせると次の様なことになる。
58号 アカ族のブランコ祭り。 かつて森の世界には、さまざまな民族が住んでいた。もともとこれらの民族はすべて、神様が作ったものだったが、どの民族も男ばかりで、女がいなかった。ある日、神様がそれぞれの民族の男たちを呼んで、配偶者を与えてくれた。しかしアカ族の男たちは遅刻したので、女を与えてもらえなかった。
 アカの男たちは、森の中を、女を求める歌を歌いながらさまよった。そこで見つけたのが、ブランコに乗った森の妖精であった。男たちはこの妖精を村に連れて帰り、自分たちの妻として娶った。
 男たちは、妖精である女たちへの慰安の意味で、年に1度ブランコを作り、女たちを楽しく遊ばせるようになった。これがブランコ祭りの始まりだというのである。なかなかロマンチックな話ではある。

(58号掲載)

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