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アカ族のブランコ祭り(3)

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

60号 アカ族のブランコ祭り1 アカ族のブランコ祭り(イェクザ・ラチュ・ビウ)は、1年でアカ族の子供達がもっとも楽しみにしている祭りだ。1年のうち、たった3日間しかこのブランコに乗れないのだ。
 村の高台に儀礼用の巨大なブランコ(ラチュ・マ)が建てられる前に、各家庭では、大人たちが自分の家の庭に子供の用の小さなブランコ(ラチュ・ザ)を作ってやる。小さな子供達はこちらのミニ・ブランコで遊ぶ。
 ブランコ祭りの期間中は、夜の帳が下りると、村の広場で歌と踊りが始まる。ウロ・アカ族では男女が輪になったり、二列になって向かい合い、恋の歌をうたう。これはかつてアカ族の若者達が、即興による歌のかけあい(歌垣)によって恋を成就させていたことの名残である。今では少なくともタイのアカ族の間では、歌垣本来の手法である、即興による歌のやりとりはすたれてしまっているようだが、彼らがうたう歌詞には、かつての歌垣で多用された内容が形式化して伝承されている。
 暗闇の中に、男女数十人が、アカ族独特の張りのある声の合掌が響き渡り、その歌声は夜更けまで、ときには明け方近くまで続く。歌をリードする年長者が最初の一小節を歌うと、一拍遅れて他の者達が合唱で続く。多くの歌声が共振し合って、荘厳で美しい響きを奏でる。しばらく聴いていると、夢うつつの不思議な気分になる。
 しかし、最近はこれらの伝統的な歌をうたえる若い人はめっきり少なくなってしまった。歌詞はアカ語の古語のようなもので、聴き真似で、かろうじて歌えたとしても、意味はほとんどわからないという人が多い。
 ブランコ祭りが終わってしばらくすると、すぐまたお祭りの日がやってくる。ゾラ・アピュロウという踊りの祭りである。この祭りはブランコ祭りの始まった日から数えて12日後(つまり同じ干支の日にあたる)に行われる。
 稲の収穫を前にした8月末から10月はじめにかけて、アカ族の村々では、儀礼や祭りが目白押しである。「ゾラ・アピュロウ」から7日後には、「ヤチ・アピュロウ」(羊の日と呼ばれる)という儀礼がおこなわれる。
60号 アカ族のブランコ祭り2 そしてその数日後には、「カイェイェ」という儀礼が行われる。悪霊を家から追い出す儀礼である。木で作った刀やおもちゃの鉄砲を持って、子供達が村の各家の床や壁を叩いてまわる。この日ばかりはいたずら好きの子供達が大活躍する。そして最後に巨大な刀を村の門の外へかついでいって捨てる。「鬼は外」といって豆をまく、日本の「節分」を連想させるような儀礼だ。「カイェイェ」の儀礼はゾラ・アピュロウから12日後に行われる。
 この時期、アカ族の村ではほとんど毎週のように儀礼があるので、いい気分で酒に酔っ払っているおじさんも多い。忙しい稲刈りまでのつかのまの休息といった趣である。

(60号掲載)

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