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ラフ族の新米の祭り

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

64号 ラフ族の新米の祭り1 毎年、タイ族の村々でオーグ・パンサー(出安居)の儀礼が行われる頃から、ロイクラトーンの祭りが始まる頃にかけて、山のラフ族の村では「ジャ・ス・オ・チャ・ヴェ」(ラフ語で「新米を食べる」の意味)の祭りが行われる。
 タイ語では「キン・カウ・マイ」と訳されるこの儀礼は、文字通り、その年にとれた新米を食べて1年の収穫を祝う、いわば収穫祭といった位置づけにある。
 しかし、オーグ・パンサーの祭りが行われる10月頃には、陸稲を作っている山岳民族の畑では、実際にはまだ稲刈りさえ終わっていない。新米を祖霊に供える儀礼だけは、実際の新穂を摘み取って行うが、それに続く宴会は昨年収穫した古米を炊いて行う。キン・カウ・マイといいながら、食べているのは古米というのは、なんだか興ざめだが、まあ、儀礼は儀礼、宴会は宴会といったところである。
 儀礼はたいてい、満月の日の数日前に行われる。新月と満月の日はラフ族では「シニ」(聖なる日)と呼ばれ、飲酒や肉食が禁じられているのだ。
 この新米の儀礼は、同じラフ族でも支系によって儀礼のやり方が異なる。
 アニミズムを信仰するラフ・ニ族の「ジャ・ス・オ・チャ・ヴェ」は、村単位では同じ日に行われるが、先祖の霊に新米を捧げる儀礼や宴会は各家ごとに行われる。各家では、この日のために豚や鶏肉をつぶし、酒やジュースを用意し、ひき肉のラーブや、豚肉や魚をバナナの葉にくるんだ蒸し焼きのほか、盛りだくさんの料理を作って、友人や親戚の来訪を待つ。この日ばかりは、どこの家を訪ねても、笑顔で宴会の輪に迎え入れられる。各家をまわって宴会のはしごなどをしているうちに満腹になり、酔いもまわってくる。特に村長や祭司、シャーマンなどの役職者の家には、村の内外からも多くの客人が集まり、朝から晩まで飲めや踊れやの大宴会が繰り広げられる。ことにシャーマンの家での宴会では、ボマパやカソマと呼ばれる男女のシャーマンがトランス状態になり、竹の床の底が抜けるのではなかいと思うほど激しく足を踏み鳴らして、踊りまくっている。
 これに対し、クリスチャンのラフ・ナ族の場合は午前中、教会で礼拝し、村の人たち全員が広場に集まって料理を持ち寄り、和やかに昼食をとる。お酒は飲まない。
64号 ラフ族の新米の祭り2 今年、多くのラフの村では10月中旬に、そして一部の村ではロイクラトーン直前の11月中旬にこの儀礼が行われた。
 私が招待されたある村での「ジャ・ス・オ・チャ・ヴェ」の料理のメニューは、豚肉のラーブ(生の赤味肉のたたき)、豚ひき肉のバナナの葉蒸し、豚肉もつの油揚げ、豚とキャベツの油炒め、豚肉と里芋の煮付けなどなど。筍や冬瓜、大根などの料理もあった。ほかに、さつまいも、タピオカ、かぼちゃなどを蒸したものを各家庭から持ち寄って食べる習慣がある。タイに秋という季節はないけれど、やはり10月、11月は収穫の季節、味覚の季節なのである。

(64号掲載)

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