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ラワ族の基礎知識

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

66号 ラワ族の基礎知識1 タイ北部のメーホンソン県、チェンマイ県、チェンラーイ県の山地には、ラワ族と呼ばれる少数民族が住んでいる。メーホンソンから南下してメーサリアンに向かう国道沿いにメラノーイという小さな町があり、ここから20キロほど東の方向に分け入った山の尾根筋に、大きなラワ族の集落がある。ここのラワ族の人たちは、カレン族の独身女性の着るワンピースの下半分を切りとって上着だけにしたような白い木綿の巻頭衣と、黒と赤を基調とした手織りのサロンの民族衣装を着ている。耳からあごに垂らしているアクセサリーや首にかけている赤やオレンジ色の数珠のような首飾りが印象的である。
 ラワ族はタイ族が侵入してくる以前の5世頃から、すでにタイ北部の先住民として栄えていたといわれるが、10世紀以降、南下してきたタイ族による諸王朝の支配や、ミャンマーから移住してきたカレン族をはじめとするなど他民族によるたび重なる圧迫のため、次第に勢力を失い、タイ族の中に同化しながらひっそりと山地で暮らす道を選んでいった。また、13〜14世紀に栄えたランナタイ王国とは深い関係があるともいわれる。
 タイでの人口は2万人程度といわれるが、独自の民族衣装をもち、今でもラワ語を話し、明確にラワ族としての文化的アイデンティティーを保っている村は、メーホンソン県メラノーイ郡の一帯に点在する数ヶ所の村のみである。
 ラワ族はオーストロアジア諸語の中のモン・クメール語派に属し、中国、ラオス、ミャンマー、タイにかけて広く居住するワ族系諸族の一グループといわれる。自称は「ラヴァ」。タイでは「ルア」とも呼ばれるが、「ルア」という呼称は、チェンラーイ県に住むプーラン族やサンタオ族、ナーンに住むティーン族などワ族系諸族一般の総括的呼称としても用いられている。
 ラワ族の人たちはかなり大きな高床式の住居に住み、焼畑農耕で陸稲を作っている。アニミズムを信仰するラワ族の人々は、毎年4月頃、稲の種まきの前に、土地の神様に許しを乞うために鶏や豚をつぶして生贄として捧げる儀礼を畑の近くで行う。稲籾をまく作業は村の若者たちが共同で行い、男たちは先端に金属のヘラのついた長い竹の棒で、30センチほどの間隔で土を起こし、その穴に女たちが籾をまいていく。農作業が終わると畑の作業小屋で儀礼に使った豚や鶏を料理して宴をするという。若いカップルが誕生する絶好の機会でもある。
66号 ラワ族の基礎知識2 『倭族から日本人へ』(弘文堂)などの著者で知られる民族学者、鳥越憲三郎博士によれば、ラワ族は「倭族」であり、「魏志倭人伝」にいう「倭人」つまり、日本人のルーツと関係があるのではないかと推測する。確かにメラノーイ地方のラワ族が着ている木綿織りの巻頭衣は、なんとなく弥生人を髣髴させるし、ラワ族の祭りのときにふるまわれる黒米や赤米で醸造された酒は、日本の大嘗祭でも使われる黒酒、白酒と起源を共有するのではないかといった推測にも私たちをかりたてる。


(66号掲載)

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