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リス族の食事

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

67号 リス族の食事1 山地に住むリス族の人々の多くは、陸稲を主食としている。いわゆるオカボである。タイの水田で栽培されるインディカ種は陸稲としては育ちにくく、山の人々の植える陸稲はすべて米の短いジャポニカ種である。山の人たちはタイ米よりもオカボのほうが好きだ。腹にたまるのだという。味も舌触りも、タイ米よりもずっと日本のご飯に近い。特にリス族は米の炊き方がうまく、ふっくら、ふんわりと炊けており、お米が立っている感じ。水加減が日本の炊きかたと似ているのだろう。このご飯さえあれば、リスの人々が「ラツ」(唐辛子の意味)と呼ぶ、トマトとパクチー(コリアンダー)の唐辛子和えだけをおかずにしても2、3杯はおかわりできる。(実際、トマトの収穫時期になるとリス族の人々はほとんど毎日これを食べている。)デザートにとれたてのパパイヤと、葉っぱをよく炒った熱い中国茶が出ればもうそれで満足という気分になる。
 リス族の食文化はなかなか奥が深く、長く滞在していると意外な料理にもおめにかかれる。あるときはコンニャク料理が食卓に並んだ。唐辛子とナムプラーで煮込んだものだが、日本のコンニャクよりも黒くて腰があり、歯応えがあってなかなかいけた。コンニャク芋は山に自生しているようだ。
 またあるときは、いつもお世話になっているチェンライのあるリス族の家で、見慣れない料理が出てきた。何か正体のわからない褐色のスープ状になった煮物だった。「いいからとにかく食べろ」といわれて少しだけ箸をつけたが、ヌルヌルしたものやシコシコしたものが舌にあたって、なんだか気味が悪く、臭いも尋常ではない。聞けば、猿の内臓とのことで、私は絶叫した。
67号 リス族の食事2 リス族の普段の食事は菜食中心で質素だが、豚肉が手に入るとがぜん張り切る。「豚肉と冬瓜のスープ」はこってりした豚肉と冬瓜のあっさりした口あたりがマッチして、リス族料理の定番になっている。また、正月や結婚式には、タケノコの千切りの漬物と骨付豚肉を煮た料理もポピュラーである。
 山岳民族では、正月をはじめ冠婚葬祭のとき、豚の生肉を最上の料理として客に振る舞う。ひき肉状にして叩いたタルタルステーキである。リス族ではこの豚の生肉に、何種類かの香辛料に加えて、ある種の木の幹(リス族の人々は『ガラ』と呼んでいた)を削ったものを入れる。この木の幹の中に含まれる成分には殺菌作用があり、生肉にまぜて食べれば、腹をこわさないという。しかしこんなおがくずを入れたぐらいで、数々の奇病を引き起こす恐ろしい病原菌や寄生虫があっさり死ぬとは思えないので、私はいっさい手をつけないようにしている。「こんなうまいものをどうして食わないんだ、実にもったいない」などと山の人々に残念がられるが、私は、この生肉を食ったあと3日3晩、ベッドの上を転げ回るほど激しい腹痛にもだえ苦しみ、入院するはめになった日本人を知っているのである。

(67号掲載)

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