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ラフ・ニ族『セコシニ』の儀礼

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

73号 ラフニ族セコシニの儀式1 タイではただ今、ソンクラーンたけなわだが、ラフ・ニ族の村でもこの時期、一年の豊作と無病息災を祈る重要な儀礼がたて続けに行われる。
さくら寮はナムラット寺の真正面にあるのに、私はふだん寺にほとんど足を踏み入れない。しかし、一年に一度だけ、ソンクラーンの日だけはカメラなどを持参して寺に入る。寺の中に興味ぶかい、奇妙な物体が出現するからだ。これは、チェディ・サーイ(砂のパゴダ)と呼ばれるものである。ソンクラーンの時期になるとタイの寺ではどこでも作られる。
 タイ仏教にはとんと興味がない私が、なぜこの砂のパゴダに関心をもつのかというと、ラフ・二族もまさにこの時期、「セコシニ」という儀礼をやり、これと似たものを作るからだ。「セコシニ」の「シニ」はラフ語で「聖日」の意味。ラフ族の聖日は満月と新月の日で、陰暦暦に従って、4月の満月の前日にこの祭りを遂行するので、必ずしもソンクラーンのように4月13日におこなわれないが、水(聖水)が重要な役割を果たすのはソンクラーンと同様だ。で、「セコ」という言葉はなんとタイ語もしくはシャン語が起源で、「サイコ(砂の島)」がなまってセコになったらしい。つまり、起源はタイ族のチェディ・サーイだったのだ。このことは、基本的にアニミズムやシャーマニズムを信仰し、寺も出家制度もなく、一見あまり仏教とは関係のなさそうなラフ・ニ族の伝統宗教が、少なくともそのスタイルにおいては、タイ族の信仰する小乗仏教の影響をかなり受けていることの証左であろう。ラフ・ニ族はミャンマー時代において、シャン族と文化的な交通が長かったため、さまざまな面で影響を受けている。ラフ・ニ族にタイヤイの女性を思わせるような色白の美人が多いのは、もしかしたら文化的な交流のみならず、恋愛の交流(?)も盛んだったのかもしれない。
73号 ラフニ族セコシニの儀式2 さて、ラフ・ニ族では、セコシニの日、まず、ホイェ(村の一番高所にあるラフ族の神社というかお寺のようなもの)にて、セコへの供え物を作る。村人は丸い器に籾、ろうそく、とうもろこしなどを入れ、トグ(色紙を細長くきった短冊)を刺したものをホイェに奉納する。また、高さ2メートルほどの木や竹を山から切ってきてホイェもしくはトボーや村長など村の役職者の家の前に埋め込み、トグや花などで美しく飾りつけて「セコ」を作る。特にラフ族にとって聖なる色である白や黄色の花が好んで飾りつけられるようだ。セコにはコモと呼ばれる神木のようなものも地面に埋め込まれる。
 夕方、日暮れの前に、村人たちがこの木の周りに集まり、ホイェに奉納していた供え物や器に盛った泥土をセコの根元のあたりに供える。ラフ族にとって、この土は力と豊饒の象徴だとのことである。村のトボー(祭司)が祈祷をはじめると村人全員がセコに向かって祈り、最後にトボーの「サアー」というかけ声とともに、いっせいに手にしていた生米をまいて儀礼が終了する。
 儀礼が終わると村人たちは、供え物とともにこのセコの周りの泥土を採掘して少しずつ器に盛り、家に持ち帰る。まるで高校球児たちが甲子園球場の土を持ち帰るような光景であるが、これもまた、儀礼によって清められた豊饒の象徴である「聖土」を家に祀っておくことで一家の一年の健康と幸福を祈願するのであろう。

(73号掲載)

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