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ラフ族の儀礼『イェ・ジョ・ヴェ』

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

74号 ラフ族の儀式イエジェヴェ1 アニミズムを信仰するラフ族の人たちは、厄災は家や身体に悪い悪霊(ジョ)がとりついたから起こると信じており、身内に病人が出たり、あまりよくないことが続いたりすると、悪霊払いの儀礼をとりおこなう。「イェ・ジョ・ヴェ」もそのひとつである。
「イェ・ジョ・ヴェ」とは、イェ(家)のジョ(悪霊)を追い払う儀礼で、家族の中に病人がでたとき、不幸が続いたとき、儀礼をやりたくなったとき(?)などに行われる。やりたくなったときというのは変な言い方だが、ようするにまあタンブン(功徳)のようなもので、お金に多少余裕があるときは、家内安全のためにもやっておくにこしたことはないという感じであろうか。この儀礼は家族単位で行われる。
 私がこの儀礼を見せてもらったJ村のある家庭では、昨年父親が亡くなり、母親は最近再婚したがすぐに離婚して戻ってきてしまい、精神的な混乱のため、錯乱状態に陥ってしまった。で、これはイェ・ジョの仕業であるということになり、ニパを呼んで、儀礼を行うことになったのである。ニパとはタイ語ではモーピーで、霊を扱う医者、つまり呪医のことである。
74号 ラフ族の儀式イエジェヴェ2 ニパは竹や木の枝、紙などで、小さなゾウや馬や人(?)の木偶を作り、祈祷を唱え、家の前でヒヨコをいけにえにしたあと、家の内外を木の葉のついた枝で作った箒のようなはたきのような形の呪具で家の中をはたいて歩く。その間、家の者たちは、夜店の輪投げに使うような竹の輪をそれぞれの頭にかぶり、家の裏側の縁の下あたりにしゃがみこんで、じっとしていなければならない。最後に箒のような呪具は、ニパが「槍投げ」の要領で、家の屋根に向かって高く投げられる。この箒が屋根をまたぎ、その先端が家の方角を向いて着地すれば、悪霊は取り除かれたことを意味するが、呪具の先端が家の方角を向かなかった場合、何度でもこの投てきが繰り返される。儀礼が終わるとニパは使用した呪具を家から少し離れた場所に持って行き、火をつけて燃やす。
「イェ・ジョ・ヴェ」の儀礼のあとはたいてい「メ・ジョ・ヴェ」という儀礼が続く。この連続するふたつの儀礼はたいていの場合セットになっているのだ。こちらは、身体にとりついた悪霊を小川に流して取り除く儀礼である。
 儀礼を受ける家族は全員で近くの小川に行き、小川をまたぐように木の枝や木の葉を使って小さな小屋を建てる。川の上にできたトンネルのようなかたちで、川の上流側と下流側に人ひとりが通り抜けられる程度の小さな出入り口がある。この小屋の中にもミニチュアの木偶などが吊り下げられ、家族全員、ニパの祈祷が行われている間、小屋の上流側の入り口近くにしゃがんで見守る。
 最後に鶏が一羽生贄にされ、家族は全員小屋を潜り抜けて儀礼は終了する。
 ニパには生贄にした鶏や現金(数十バーツ〜数百バーツ)が謝礼として支払われる。

(74号掲載)

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