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モン族のろうけつ染め

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

88号 モン族のろうけつ染め1 青モン族(モン・ジュア)の女性たちは、さまざまな刺繍やアップリケ、アクセサリーがちりばめられた色鮮やかなひだスカートをはく。
 このスカートの膝上あたりに位置する、藍色地に白の精緻な幾何学模様が刻まれた幅25センチ〜35センチほどの布は、ろうけつ(臈纈)染めという染色法を使って染められている。モン族のスカートは複数枚の生地を同心円状に縫いあわせていくのだが、ろうけつ染めの部分の布は伸ばすと4ワー(約6メートル)にもなる。
ろうけつ染めの工程は大きく二つに分けられる。最初の工程は、白布に蜜蝋で模様を刻むことである。
 机の上に白い布を敷き、溶かした蜜蝋と前回の染めに使った染め汁を混ぜたものを「インク」として、金属製のへら状の器具を使って描いていく。蝋の性質によって染料がはじくため、この「インク」を使って書いた部分だけが「地」として残って模様を白く浮かび上がらせるのだ。布は、かつては手織りの麻(大麻)の生地が使われていたが、現在では木綿が主流になっているという。
 この工程を実演してくれた女性(33歳)は、最初のとっかかりである何本かの縁取りの線を、物差しなどを一切使わずにフリーハンドで一気に引いていた。下書きも何もない一発勝負である。へらの柄の部分が定規の代わりになっているとはいえ、集中力と気合が必要とされる熟練の技だ。図案は見本の布もあるが、彼女の場合はデザインがすべて頭の中に入っているという。一枚分の布地の模様を書き上げるだけで急いでも1週間以上かかるという。
下絵を書き終わると、いよいよ染めである。
88号 モン族のろうけつ染め2 モン族の藍染めには、タイ族の日常着であるモーホームと同様、タイ語で「トン・ホーム」と呼ばれるリュウキュウアイ(琉球藍 キツネノマゴ科)もしくは「トン・クラーム」と呼ばれるインドアイ(マメ科)の葉が用いられる。リュウキュウアイはモン語で「ガン」と呼ばれている。リュウキュウアイの葉を水につけ、灰や石灰などを混ぜて発酵させた液にデザイン済みの布を浸し、染まったら日に干し、また染めるといった作業を3回にわたって繰り返す。藍染めの詳細については、「CHAO」67号の「モーホーム特集」を参照のこと。モン族の藍染めの手法も基本的にはモーホームと同様である。
 なお、染汁は捨てないでิバケツなどで保存され、原料を少しずつ継ぎ足してずっと使われる。材料の微妙なさじ加減により、その家にしか出せない色合いというのもあるのかもしれない。それを聞いて、焼き鳥屋などに代々伝わる「秘伝のたれ」を連想してしまった。

(88号掲載)

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