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モン族の少女

カテゴリー: みちくさ写真 | 2007.05.21 Monday

 

みちくさ28号 モン族の少女

 小学校に上がる前、祖母に刺繍セットを買って欲しいとねだったことがある。セットの中には、刺繍用の枠と糸、針、布が入っていて、布にプリントされたサンリオのキャラクターを縫い取っていく、というものだった。しかし、針は危ないから小学校まで待ちなさい、と却下され、おとなしく待った。
 私は、洋裁をしていた母が、裁ちばさみのケースに施したうさぎのアップリケが大好きだった。裁ちばさみは子供が開けてはいけない引き出しの中にしまわれていて、時々、私はこっそり開けて眺めた。几帳面な母の細かいステッチに囲まれたうさぎは、いろんな色の小さな風船をたくさん持っている。満足するまで見てから、またそっと引き出しを閉めた。
 そんなことを思い出したのは、観光客を相手に刺繍の小物や民族衣装を売っている市場に行ったと時だった。
 青空の下、細かい刺繍の入った壁掛けやポーチが机の上に並んでいる。その隅っこに、口をとがらせて刺繍をする、小さな女の子―私が針を持った時よりずっと幼い−がいた。女の子が握り締めている黒地の布には、オレンジ色の糸が線でもなく、点でもなく散らばっている。女の子は、私が間近で見ていてもおかまいなしに、ちくっと針を刺しては、すっと糸を抜く作業を繰り返していた。その隣では、分厚いメガネのおばあちゃんが、へんてこな動物のアップリケを縫っていた。
 彼女達のまとう服の襟飾りは美しい。その小さな布を埋め尽くした刺繍を見ると、子供の頃に母のアップリケを覗いた時と同じようにドキドキする。
 一年後、またその市場に行った。ちょっと大きくなった女の子がそこにいて、仕事を終えて帰る所だった。ぴかぴかの衣装を着て、ぴかぴかの目をしていた。

ラオス

(One-Two Chiangmai 28号)

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