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雨上がりの洗濯

カテゴリー: みちくさ写真 | 2007.05.21 Monday

 

みちくさ38号 雨上がりの洗濯


 雨の季節の終わりの頃。
 山村の小学校の前を流れる小川を少し遡ると、滝に出るらしい。川に沿って道がついているが、人ひとりがやっと通れる小道は、生い茂った山の緑でほんの入り口しか見えない。
 「滝に行こう」と子供達がその道を入っていった時は、まだ空は晴れていた。トイレに良い場所を探して出遅れた私が、さあ、と立ち上がったとたんに雨が降り出した。降り出しから大粒のどしゃぶりで、大きな葉っぱの木の下でしゃがみ直すと、道の奥から子供達がポーンポーンと勢いよく飛び出てきた。滝で遊んだからなのか、雨のせいなのか、どの子もすっかりずぶ濡れだ。最後の一人が目の前を通り過ぎた時、私も覚悟を決めて、雨の中に飛び出した。
 道は村に向かって緩やかに下っている。子供達はつるつる滑る山道を素足やゴムぞうりで飛ぶように駆けていく。
 とうとう見えなくなった彼らに、グアバの木の所で追いついた。淡い緑のグアバの実を両手に握って噛りついている。一人が、前歯の抜けた顔で、にいっと笑って、その実を私に突き出した。雨に濡れた実を噛ると、皮の青い味と種の周りのやさしい甘さがいっぺんにした。ポケットに実を押し込めて、彼らはまた走り出した。
 村に着いたら、もう雨はやんでいた。
 子供達はそれぞれ夕飯の煙の上る家へと帰る。
 家の中で何やらおばちゃんの大きな声がして、外へほおり出された子供が一人、水浴び場へ走ってく。なるほど、ズボンのおしりが泥だらけである。彼は着ている物をぱっぱと脱いで、いきなり石鹸で頭と体をこちょこちょ洗い、頭から水をかぶる。 それから、洗濯だ。ビタンと広げたズボンのポケットから出てきたおもちゃに、ちょっとだけ気をとられるが、ピチャピチャ ごしごし、ビタン ごしごしと、手つきがいい。
 最後に絞って干した服から、大きなしずくがポタポタ垂れた。歯抜けの彼は、さっぱりした顔で家へ帰っていった。

チェンラーイ

(One-Two Chiangmai 37号掲載)

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