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ジュース屋さん

カテゴリー: みちくさ写真 | 2007.05.21 Monday

 

みちくさ56号 ジュース屋さん


 ミキサーが欲しいとずっと思っている。
 子供の頃、イチゴの季節になると祖母が戸棚の奥からミキサーを出して、イチゴジュースを作ってくれた。分厚いガラスのボディに薄茶色に汚れたピンク色の蓋がついた、年季の入りまくったミキサーが登場するたびに、嬉しくて妹と磨いたものだ。
 祖母がイチゴと砂糖、牛乳、氷をほうりこんでスイッチを押すと、ミキサーはすさまじい音を立てた。でき立てのピンク色の飲み物は生き物のように泡立っていて、それをガラスコップに均等に注ぐのは私の係。口の中でいちごの種がプチプチいうのが楽しくて、噛んで飲んだ。バナナジュースなら、それだけでお腹が一杯になった。
 ところが、ある日、ミキサーは動かなくなった。老衰である。以来、フルーツジュースは祖母とデパートに行くとたまに飲める代物になってしまった。
 それから月日がたち、フルーツジュースに再会したのはタイの路上だ。折りたたみの机の上にミキサーとフルーツバスケットが置かれていて、試しにパイナップル・ジュースを頼んだ。
 ジュースの屋台で、注文した果物が目の前でパンされる(ミキサーにかけられる)のを見守る瞬間は、大人になってもワクワクするものである。毎年、チェンマイにイチゴの季節が訪れると、ミルクを入れたイチゴジュースを注文するのだが、マイサイグア(塩を入れないで)と言い忘れ、塩辛いジュースを口にする度に「ミキサーが欲しい」と思うのである。

チェンマイ

(56号掲載)

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