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カテゴリー: みちくさ写真 | 2007.05.21 Monday

 

みちくさ87号 壷


 食料を貯蔵したり、醗酵させたり、壺は数千年も前から人の営みの傍らにあった。
 チェンマイでも昔ながらの台所を覗けば、大小の壺が見つかる。もっとも、ナンプラーなど本来は壺や甕に貯蔵していた調味料などをペットボトルやガラス瓶で買ってくるようになってから、壺たちの活躍する場は少なくなっているようだ。それは日本も同じで、実家の台所を見渡しても梅干の壺ぐらいしか出てこない。
 チェンマイの下宿の台所には、壺のような鍋のような代物がひとつある。日本でも流行っていた土鍋ご飯を試してみたくて、素焼きの土器を作っている村で飯炊き用の鍋を買ったのだ。コロンと丸いふた付のちょうど壺のような形の土鍋である。
 果たして、ちょっと蒸らしてからぽあんと蓋を開けると、表面にふつふつとくぼみが出来て、ふっくら美味しそうに炊きあがっていた。口の中で広がるマリ米の香りの中に、村人の言っていた「土っぽい良い香り」とやらがかすかにする。
 全部たいらげ、満足しているところへ大家さんが通りかかった。「あ、この土鍋はね、火葬した人の骨と灰を入れて白い布でふたをするだろ。数日したら壺ごと地面に叩き付けて割るんだよ。最近はあまり見なくなったけどね。ハッハッハッ」と笑いながら行ってしまった。
 骨鍋はその後、足元にごろんと置かれたまんまである。

(87号掲載)

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