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絆(きずな)

カテゴリー: ギャ!ギャップ!これって常識?非常識? | 2007.07.21 Saturday

 

絆(きずな) 心の絆(きずな)、愛の絆と言う言葉は、昔は文章や詩の中にしばしば現れていたが、今の若い世代にとっては既に死語になっているのではなかろうか? 絆と言う漢字も普段お目に掛かる事は希である。この絆は普通は目に見る事が出来ない糸と考えられている。だがタイではこれを見て手に触れる事が出来る。但しこの結論は、タイに長らく滞在して私が見聞体験した事からの私流の解釈だから、異論を持たれる方があっても当たり前と心得てこのコラムを書いている。
 それはタイのマジョリテイーである仏教に関連した行事や習慣で登場するバーイシーである。木綿の糸だが縒り(より)は強くないから、コツを覚えれば掌に巻いてやっとちぎれる(刃物で切ってはいけない)普通の紐であるが、勿論お寺でお払い清められた物でなければならない。大掛かりな使い方では、地鎮祭や新築祝いなどにその敷地や建物をグルリと一周張り巡らすから数百、数十米になる。その一端は仏様に結ばれ、儀式を司る僧侶の手を経て端末は施主の合掌の手に握られて儀式が進行する。またお寺での大きな仏事の際には、ウボソットとかサーラーと呼ばれる礼拝堂の天井に縦横に張り渡し、勿論仏様や参加する僧侶の手に結ばれる幹線が作られる。そして適当な間隔で詰め掛ける信者の手に届くほどの長さの支線が幹線から多数垂れ下げられる。儀式が始ると参列者はこの端末を手に合掌するかそれを頭に巻き付け、終わると適当にちぎって大事に家に持ち帰る。人数の増加や遅れて来る人がいてこの支線の不足を考えて、予め会場には大きな糸巻きが用意されて、これで幹線を延長したり追加の支線を垂らしたりして対応する。
 小さな使用としては、個人的にお寺にタンブン(喜捨)に訪れてお坊様にお祈りしてもらった後、短くちぎったものを手首に巻いていただく。また、仏式に則った結婚式では、儀式の終わりに招待客が祝いの言葉と共にカップルの手首に用意されたバーイシーを巻く習慣がある。もっと個人的なものでイサーン(東北地方)出身者多くに見られるが、身奇麗な服装なのに手首に汚れて灰色になり毛羽立ったバーイシーをしている人がいる。彼らは勉学や就職或いは長い旅行で故郷を離れる際には、親族や部落の長老にご挨拶する習慣が根強く残っている。年配者たちは、この時のために普段から準備されたバーイシーを旅の安全や健康と成功への祈りを込めて、出発する人の手首に巻くのである。
 思うにこのバーイシーの役目は、仏様の御心や教えを端末を握った信者に電気のように伝える電線であり、短く手首に巻いた物も仏様のご利益や人の祈りが込められて帯電した聖なる糸と考えられているのであろう。「以心伝心」とする精神主義の日本では見られない習慣で、これを見るとタイ人は多分に現実実証主義的な思想の持ち主ではないかと言うのが私の観察である。


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(101号掲載)

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