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リス族の住居

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.08.05 Sunday

 

タイの山岳民族103号リス族の住居-a
 リス族の家の多くは、アカ族やラフ族などに見られるような高床式住居ではなく、地面をそのまま床にして主要生活空間とする「地床式」(いわゆる土間式)の住居である。しかしメーホーンソーン県地方では高床式の家屋も多く見られる。リス族の住居は、ヤーカー(茅)を並べて切妻式の屋根を葺き、割竹を縦方向に並べて壁を作った質素で単純な家屋で、かつての伝統的な建築では接合材に竹や籐の紐を使い、釘はほとんど使われなかったという。が、近年ではタイ族の建築法で木造高床式の住居、コンクリート製の住居も多く建てられるようになった。
 玄関は家の正面、中央に位置し、入り口のドアを開けると、正面の壁の上方に日本の神棚のように棚をしつらえた祭壇があり、陶器製の小さな杯が数個から十数個ほど並べてある。これがリス族の先祖の霊を祀る「タビャ」で、アニミズムを信仰する村なら、どこの家でも入り口の正面にある。リス族にはグアパ、ビャパ、ウーパなどのトーテムによるクラン(姓)があるが、祭壇の形態や装飾のしかた、杯の数、配置方法などはクランによって異なり、リーチャ(李姓)ヤンチャ(楊姓)のリス族には漢族の 祭壇の影響が見られる。 タビャとその周辺は神聖な空間なので、みだりに触れたり、ここにモノをおいたり、この前で言い争いうなどをしてはならないとされている。写真撮影をする場合は必ず戸主に許可を得ること(拒否される場合あり)。
 リスの人たちは家の中にロープをつるし、衣類などをかけておくことがあるが、特にズボンや下着など腰から下に身につけるものは不浄とされ、この祭壇のレベルよりも高い位置に吊るすことは許されない。
 リス族の家には窓がないため、家の中は昼間でも薄暗く、ひんやりと土の匂いがする。タビャの両横には竹の壁で仕切られた個室があり、夫婦や子供たちの寝室としてあてがわれている。また、入り口を入って右側にはやはり木と竹で70センチほどの高さにしつらえた1、2畳ぶんほどの寝台がある。これは「ゾマ」と呼ばれ、ちょっとした休憩や昼寝、または来客を泊めるための寝台となる。
タイの山岳民族103号リス族の住居-b 
 左側の奥の方は台所になっており、地面に直接火を起こし、七輪などを使って調理する。台所まわりの鍋や小さな食器棚をのぞけば家具は少なく、家の中はがらんとした印象を受けるが、それなりにきちんと整理され、掃除がいきとどいている。日常の家族の食事はこのあたりでとられ、木製の20センチほどの高さの小さな腰掛に座り、籐製の丸いカントークを囲んで食べる。客人が来たときに限ってタビャの正面に宴席が移されることもある。
 リス族の集落の特徴は、ほとんどの家の入り口がふもと(谷側)を見下ろすように同じ方角を向いていることだ。それぞれの家の前にはちょっとした空き地があり、前後に別の家が建てる場合、各家の入り口の位置が完全に重なり合わないように左右に位置をずらして建てられる。リス族では新年をはじめとして四季折々に、先祖の霊が正面の入り口を通ってタビャに戻ってくると信じられており、この霊の通り道を塞ぐような家の建て方をしてはならないのだ。このことは彼らにとって先祖の霊がいかに重要で、畏敬に値する存在であるかを示している。また家の前の広場は新年の祭りの際に神木が建てられ、村人がこの木の前で輪になって踊るためのものだ。


(103号掲載)

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