チェンマイ発・ちょっとディープな北タイ日本語情報誌CHAO『ちゃ〜お』は毎月10日、25日に発行。本文へスキップ

ムラブリ族の現在

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

92号 ムラブリ族の現在1 東南アジア最後の狩猟採集民族ともいわれるムラブリ族。タイ国内ではナーン県とプレー県にわずか300人ほどの人口が確認されているのみの、絶滅寸前の民族である。タイの人からは「ピートンルアン」(「バナナの葉の精霊」の意)、モン族の人からは「マンクー」(「森の人」の意)と呼ばれている。
 かつては、森の中にバナナの葉で屋根を葺いた小さな日よけ小屋を建て、食べ物を求めて数日〜数週間のサイクルで転々と移動する原始的生活を営んでいたしていたムラブリ族だが、タイ政府やキリスト教団体などの指導により約10年前から徐々に定住し始め、ジャングルの中だけで昔ながらの生活する人はもういなくなった。
現在、ナーン県ウィエンサー郡のホイユアク村には、25家族約150人のムラブリが集落をかまえ、近くに住むモン族の人々の畑で雇われて働いたりして生活している。
 ここではタイ政府から耕地を与えられ、数年前から農耕も始めた。これまでいっさい農耕をしてこなかったムラブリにとっては画期的な維新だった。陸稲、穀物、野菜などを植え、集落の中では山岳民族開発支援センターの指導で、アヒルや豚、魚などの養殖も始まっている。
 また昨年、政府の援助で村の各家にソーラーシステムの発電機が設置され、家の中に蛍光灯の明かりが灯るようになった。まだ村の中でテレビを見ている人はいないようだ。
 かつてムラブリ族はお金の使い方さえ知らないといわれ、平地タイ族、モン族などから驚くほど安い労働力として使役されていた。10年ほど前は、家族全員が3ヶ月働いて豚一頭(2000バーツ相当)のみとか、一日の日当が20バーツというような過酷な条件を強いられていたが、現在では1日100〜150バーツまでに生活レベルも向上している。村のリーダーの男性は、最近、とうもろこしを売ったお金を頭金にローンで新車のバイクを買った。かつてはみなひょろひょろにやせていたが、今ではけっこう恰幅のよい人もいて、子供たちの体格も向上しているように思われる。
 観光も彼らの生活手段の一つになりつつある。
 かつて、悪路のため四輪駆動車でしかたどり着くことができなかったホイユアク村だが、現在ではすぐ近くまで舗装道路が整備され、観光客の数も次第に増えている。ナーンにはムラブリ族を見るツアーもあり、白人観光客が豚肉を土産にぶらさげたガイドに連れられて連日やってくる。褌一丁で出迎えるアイパーおじさんは、観光客対応担当のようで、家の中に案内し、ケーン演奏や火打石の芸などを披露してくれる。
 また最近では、タイ人観光客、そして近隣の村々からも、小金持ちになっていい身なりをしたモン族の人々が新車のピックアップトラックなどで乗りつけて、ムラブリを見物にやってきている。これまで観光の対象になっていたモン族の人々が、今では観光する立場にまわっていることに、時代の移りかわりを感じさせる。
92号ムラブリ族の現在2
 団体観光客の予約が入り、豚一頭の報酬が入るような場合は、集落から徒歩で10分ほど丘を登った森の一角に、昔ながらのバナナの葉の住居を建てて、その生活ぶりやムラブリ流の豚の料理法を観光客の前で再現して見せてくれたりすることもある。
 ムラブリの女性にどのように生活が変わったか、聞いてみた。
「食べ物は昔と比べて楽に手に入るようになったけれど、現金収入が入るようになって、男たちのなかには、毎日酒に浸るようになった者もいて困ります」
 そういえば、私が訪れたときも、ひとりの男が悪酔いして家の中で暴れていた。かつては暴力などはおろか、口喧嘩さえほとんどしないムラブリの人たちだったが、これからドメスティック・バイオレンス問題なども出てくるのかもしれない。

(92号掲載)

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モン族の葬式(2)

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

90号 モン族の葬式2−1 モン族の通夜は、小さな子供が亡くなった場合は3日程度と短いが、大人では通常1週間から10日かけておこなわれる。毎日弔問客は訪れるが、特に最後の日、つまり埋葬の前日には大きな儀礼が行われ、多数の人が集まってクライマックスを迎える。
 埋葬の前夜、これはモン族の葬式のユニークな特徴であるが、親族や関係者一同が集まって、故人が残した諸問題の後処理について話し合うというイベントがある。埋葬を前に、故人がかかえていたすべての問題や懸案事項を話し合い、一晩かけて一気に解決までもっていくのだ。
 話し合いの内容は、配偶者や子供などへの遺産分けであったり、後を引いている喧嘩の和解であったり、また故人が借金を背負っていた場合、それを誰がどういうプランで責任をもって返済するかなどで、きわめて現実的な問題が審議される。裁判官のような立場の人もいて、いわば民事裁判所のようなものだ。故人の借金やトラブルなどはこの日をもって完全に調停、解決されたものとし、後日になってこの裁定に不服を申し立てたり、故人に関するあらたな問題を蒸し返したりすることはできないという。この世の問題はこの世できれいさっぱり清算して、死者の魂に安心して冥界に旅立ってもらうという配慮なのだろう。「義」や「けじめ」を重んじるモン族らしいやりかたである。
 出棺の日は、松明を持った人を先頭に親族や村人たちが行列組んで野辺送りをし、埋葬に出かける。
 青モン族ではその途中、村の近くの広場で一度休憩し、2本の棒に縄をくくりつけた担架状の台座に載せた遺体を男たちが担いだまま、広場に植えられた儀礼のための特別な木の周囲を数回まわる。まわる回数は姓によって異なる。そのとき激しく爆竹がたかれ、また太鼓とケーンの楽団もひときわ大きな音で奏でる。
 その後、遺体を載せた担架は、丸太で作った2本の柱の上に一時的に安置され、ここで牛を殺して料理を作り、参列者全員で最後の食事を食べる。
90号 モン族の葬式2−2 白モン族の場合は上記の儀礼は行わず、家の前で牛を殺して最後の料理とし、そのまま埋葬場所へ直行する。
 埋葬は村の近くの墓地で行われる。このとき初めて棺が用意され、草が遺体の下に敷かれ、松明の火で棺を清める儀式がある。この風習はラフ族やリス族の葬儀においても見られ、漢族文化の影響と考えられる。
 死者の魂は埋葬後13日後に家にも戻ってくると信じられており、13日目にまたコーケー(村の役職者、前号ご参照のこと)を中心に儀礼が行われる。

(90号掲載)

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モン族の葬式(1)

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

「ドンドンドン……」
 村の中に速いリズムの太鼓の音が響き渡るのを聞くと、モン族の子供たちは恐怖におびえるという。それは死人が出て、葬式が行われている合図のようなものだからだ。
 モン族では人が亡くなると、まず最初に喪主がしなければならないことは「コーケー」と呼ばれる村の役職者のところへ依頼に行くことだ。コーケーはモンの葬儀において僧侶のような役割を果たし、その後の1週間からときには10日間以上におよぶ葬儀が滞りなく完遂されるまで、すべての段取りの統括指揮の責任を負う。儀礼に必要な豚や鶏が何頭で、どんな道具が必要で、埋葬に適した日取りがいつかなど、すべて指図する。
 親類や村人たちの中から、炊き出しの世話、豚や鶏などの調達、買出し、埋葬の準備、ケーン(笙)や太鼓の奏者の役割分担がなされる。長い葬儀の間、喪主は弔問客らのために三度三度の食事を作ってもてなさなければならない。料理はなぜか肉類が中心で、豚肉を煮たもの、揚げたものなど、単調な味付けでなおかつ油っこいものが多い。毎日のように豚や鶏がつぶされる。男たちは葬儀の間中、酒(焼酎)を酌み交わす。
89号 モン族の葬式1−1 葬儀の間、死者にも三度三度の食事が供えられ、家の中の土間では、二人の男が和太鼓のような巨大な太鼓の音に合わせてモン族独特の大きなケーンを踊りながら吹き続ける。くるくるとまわる踊りである。またザラ紙で作った護符や金色の紙で作った模造の金塊などを死者に供える。
 モン族の葬儀の基本的なコンセプトは、死者の魂を彼が生まれた場所まで帰してあげることだという。コーケーは、故人がこれまでの人生ですごしてきたそれぞれの場所(焼き畑農業をしてきたモン族は、かつては頻繁に移動、引越しを繰り返してきた)を調べ、その地名や村の名前を、時間軸を逆にさかのぼって読み上げ、最後に、生誕した場所にたどりつくようにする。死者の魂は自分のたどってきた道を帰って生まれた場所に戻るのだ。
 モン族の葬儀の特徴的な点は、通夜の間中、遺体を棺に入れないことである。死装束こそ着せ替えはするが、遺体は一貫してむき出しのまま、祭壇の前に安置される。当然遺体は腐り始め、蛆がわき、異臭を放ち始める。それでも遺族や弔問客たちはモン族のしきたりにしたがって、最後まで遺体と向き合う。
89号 モン族の葬式1−2 かわるがわる立ち寄る弔問客たちは、遺体にすがるようにして大声で泣き、そして何か歌うように死者に語りかける。これはもちろん死者を悼み、悲しむ歌であるが、同時に故人の死を契機に、弔問客(特に女性が多い)自身が自分のこれまでの人生の辛酸や悲しみ、苦悩を物語のように告白する場でもあるという。他者の死を契機として、リアルな死体と正面から向き合いながら、自分の人生をそれに重ねあわせ、人間の死や存在について考える機会でもある。この告白というか懺悔のような自分史の吐露の内容は完全なアドリブで、もしモン語がわかる人であればかなり興味深い内容であろう。この「語り」は同時に何人もの人が行い、ときに不協和音のような奇妙な響きをもった大合唱のように聞こえる。

(89号掲載)

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モン族のろうけつ染め

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

88号 モン族のろうけつ染め1 青モン族(モン・ジュア)の女性たちは、さまざまな刺繍やアップリケ、アクセサリーがちりばめられた色鮮やかなひだスカートをはく。
 このスカートの膝上あたりに位置する、藍色地に白の精緻な幾何学模様が刻まれた幅25センチ〜35センチほどの布は、ろうけつ(臈纈)染めという染色法を使って染められている。モン族のスカートは複数枚の生地を同心円状に縫いあわせていくのだが、ろうけつ染めの部分の布は伸ばすと4ワー(約6メートル)にもなる。
ろうけつ染めの工程は大きく二つに分けられる。最初の工程は、白布に蜜蝋で模様を刻むことである。
 机の上に白い布を敷き、溶かした蜜蝋と前回の染めに使った染め汁を混ぜたものを「インク」として、金属製のへら状の器具を使って描いていく。蝋の性質によって染料がはじくため、この「インク」を使って書いた部分だけが「地」として残って模様を白く浮かび上がらせるのだ。布は、かつては手織りの麻(大麻)の生地が使われていたが、現在では木綿が主流になっているという。
 この工程を実演してくれた女性(33歳)は、最初のとっかかりである何本かの縁取りの線を、物差しなどを一切使わずにフリーハンドで一気に引いていた。下書きも何もない一発勝負である。へらの柄の部分が定規の代わりになっているとはいえ、集中力と気合が必要とされる熟練の技だ。図案は見本の布もあるが、彼女の場合はデザインがすべて頭の中に入っているという。一枚分の布地の模様を書き上げるだけで急いでも1週間以上かかるという。
下絵を書き終わると、いよいよ染めである。
88号 モン族のろうけつ染め2 モン族の藍染めには、タイ族の日常着であるモーホームと同様、タイ語で「トン・ホーム」と呼ばれるリュウキュウアイ(琉球藍 キツネノマゴ科)もしくは「トン・クラーム」と呼ばれるインドアイ(マメ科)の葉が用いられる。リュウキュウアイはモン語で「ガン」と呼ばれている。リュウキュウアイの葉を水につけ、灰や石灰などを混ぜて発酵させた液にデザイン済みの布を浸し、染まったら日に干し、また染めるといった作業を3回にわたって繰り返す。藍染めの詳細については、「CHAO」67号の「モーホーム特集」を参照のこと。モン族の藍染めの手法も基本的にはモーホームと同様である。
 なお、染汁は捨てないでิバケツなどで保存され、原料を少しずつ継ぎ足してずっと使われる。材料の微妙なさじ加減により、その家にしか出せない色合いというのもあるのかもしれない。それを聞いて、焼き鳥屋などに代々伝わる「秘伝のたれ」を連想してしまった。

(88号掲載)

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カレン語学習会

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

87号 カレン語学習会1 カレン族の自称は「プヮクニョー」である。「人」という意味だ。
 実を言うと私はカレン語が話せない。昔、2週間ほどカレン族の女の子から習ったことがあるが、すっかり忘れてしまった。だから今回は講座と銘打つのもおこがましいので、「学習会」である。間違いがあったら御免。以下のボキャブラリーは、さくらプロジェクトのスゴー・カレンの女性スタッフから採取したものである。彼女はチェンライ県のルアミット村の出身であるが、スゴー・カレンとポー(プー)カレンとでは当然言葉が違うし、また同じルアミット村内でのスゴー・カレン同士でも、出身地によって一部の語彙や発音が異なるそうだ。メーホンソン県、ランパーン県、チェンライ県などでもそれぞれ方言の違いがあるとのこと。
 言葉の響きはやさしく、少しビルマ語の響きに似ているような気もする。否定文には「トゥ」をつけ、最後に「バ」をつける。

私「ヤー」 あなた「ナー」 彼「アヴェダ」
これは何ですか?「タトゥカイ ムガロ」 
あなたは誰ですか?「ナー ヌーケ ムガロ」
あなたの名前は何ですか?「ナー ヌー ミー ルゥ ムガロ」または「ナー ミー ディロ」でも通じる。
私の名前は・・・す。「ヤー チュ ミー ルゥ・・・」
年はいくつですか?「ナー ヌー ニー プゲ ニーロ」
こんにちは「オー チュワ」
ありがとう「ターブリュ」 
どういたしまして「トゥバ ノミ バ」
どこへ行きますか?「レ プロ」または「レ スロ」
町へ行きます「レ ルゥー ヴェプー」 
遊びに行きます「レ ハ」 家に帰ります「ケルドゥ」
ご飯を食べる「オ メ」 
もうご飯を食べましたか?「オ メ リャ」
水を飲む「オ ティ」 
酒を飲む「オ スィ」
お腹がすいた「タモ オ サミ」 
お腹がいっぱい「レ オ リー」
父 「パー」 母「ムー」 祖父「プ」 祖母「ピー」 
息子「ポークゥー」 娘「ポームー」 
兄「ヴェチョ」 姉「ヴェノ」 弟、妹「プー」または「ケ」
夫「ワー」 妻「マー」 恋人「タープードー」
もう恋人はいますか?「ナー タープードー オ リャ」
おいしい「グイ」 
まずい「トゥグ グイ バ」
美しい「グゥエー」 
暑い「タコー」 寒い「タグー」 冷たい「クリー」
目「メクリー」 鼻「ナデー」 耳「ナー」 口「タコー」 手「チュ」 足「コー」
豚「ト」 鶏「チョ」 牛「タト」 水牛「プナー」 馬「クセー」 
犬「チョイ」 猫「サミニョー」 
山「クチュー」 田んぼ「チー」 畑「クゥ」 川「ティグロー」
米「メ」 とうもろこし「ブケ」 野菜「サバド」 果物「タサー」
パパイヤ「ムクティー」 バナナ「スクゥイ」 マンゴー「スーコー」

87号 カレン語学習会2 ちなみに、カレン族が求婚するときは、かつては女性の側から男性の側にプロポーズに行くという慣わしがあったが、現在では男性側からの求婚も普通に行われているとのことだ。



(87号掲載)

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ヤオ語(ミエン語)入門

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

 ヤオ族は、自称を「ミエン」(人という意味)といい、民族名は自称を重んじるというコンセンサスに従えば「イウ ミエン」(ヤオの人々)というのが適当だが、中国でもラオスでもすっかりヤオ族という呼称が一般的に定着していること、またあるヤオの友人の「確かに自分達はミエン(人)だが、他者からミエン(人間)という一般名称で呼ばれることには若干の違和感を抱く」との意見もあり、ここではヤオという他称を使わせていただく。
 ヤオの言葉もムラブリ語同様、とても響きが美しい。語尾を少し裏声にしながら高く跳ね上げるので、聞いていて艶っぽいというか、なんとなく色気を感じる言葉である。若い女性に話しかけられると、なんだか誘惑されているような気分になるが、それは早計というもの。否定句は「ン」もしくは「マイ」
 
私「イャ」 あなた「ムイ」 彼「ニンブア」
父「アテー」母「アマー」「ナオ」息子「クヮートン」娘「クヮーシア」
父方の祖父「アオン」母方の祖父「ターオン」
父方の祖母「アクー」母方の祖母「タクー」
姉「アトー」兄「アコー」
妹(兄が呼ぶ場合)「ムア」(姉が呼ぶ場合)「ジア」
弟(兄が呼ぶ場合)「イオウ」(姉が呼ぶ場合)「ナオ」
これは何ですか?「ナーイ ハニュー」 
あなたは誰ですか 「ムイ ペン ハータオ」
ありがとう「レンチン」(「こんにちは」の意味で使われることもある)
どういたしまして「ン ペン ハニュー」
さようなら「ミン ダン オー」
どこへ行きますか「ミン ハーイ」
畑に行きます「ミン デー」
家に帰ります「ズアンピャオ」
遊びに行きます「ミン ジャオ」
女の子を口説きに(娘さんのところへ)行きます。「ミン ジャオ シア」
どこに住んでいますか「イェム ハーイ ダオ」
ご飯を食べる「ニャン ハーン」
水を飲む「ホップ ウァム」
酒を飲む「ホップ ティウ」
お腹がすいた「ヒウ シア」
お腹いっぱいです「ペオニャ」
あなたの名前は何ですか?「ムイ ブア へウ ハニュー」
私の名前はカウセンです。「アニェー ブア へウ カウセン」
年は何歳ですか?「ムイ バッチェア ヒャン」
(値段は)いくらですか「バッチェア」
豚「トゥーン」牛「ヤーグォン」鶏「チェー」水牛「グォン」
犬「チュー」馬「マー」
暑い「ユア」寒い「ジュアン」
いい「ノン」よくない「ンノン」美しい「ズアイ」
もう恋人はいますか?「マイ コンワー ミエン ニャー」(「話をする相手がいますか」の意味)
 
ヤオ語もリス語同様、本来「恋人」という言葉がない。かわりにかつては上記のような婉曲的な表現が使われた。もちろんいまどきの若者は「フェーン」で代用しているとか。
もう結婚していますか?「マイ アオ ゴー ニャー」(夫はいますかの意味)
ヤオ語を話すことができますか?「ムイ コン ミエン ワー トゥゲー」
できません「ン トゥー」
お化け(ピー)「チャンタイ」
1から10まで 1イヤッ 2 イー 3 プア 4ピェー 5ピャー 6チュ 7シア 8ヒャッ 9ドゥア 10ツェップ

 ヤオ語の響きはとても音楽的でリズムがあり、楽しく習える言語だと思う。ただし、声調があり、たとえば「人」はミエンだが、これを高声で発音すると「先祖の霊」というまったく違う意味になったりするから注意が必要。

(86号掲載)

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モン語基礎講座

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

 タイのモン族にはモン・ジュア(青モン)とモン・ダオ(白モン)というふたつの支系があり、青モン族は紺色のろうけつ染めのプリーツスカートを、白モン族は普段着として青のズボン、祭礼用に白のスカートを着用するのが特徴。民族衣装だけでなく、家の建て方や文化習慣にも違いがあり、発音や語彙の一部も若干異なる。言葉の違いは方言程度のもので、東京弁と関西弁ほどの違いといえばいいかもしれない。しかし、あるモン族の人に言わせれば、気質、性格も若干違うとのことで、両者の間で恋愛、婚姻などが成立する割合は比較的低いという。
 モン語には中国語やタイ語同様に声調があり、その微妙な違いにより意味がまったく変わってしまうことがあるから要注意だ。以下の表記もそのまま発音しては通じないケースも多く、あくまで参考まで。青モン語と白モン語で語彙、発音が違う場合は括弧内が白モン語となる。否定語は「チー」

1〜10 「1イー 2オー、3ペー 4プラオ 5ジュー (チィ) 6チャオ 7シャン (シャー)」 8イー 9ジュア 10 カウ」
私「 クゥ 」あなた 「コー」 彼 「プア(ラウ)」
父 「イー (ツィー)」 母 「ナ (ニヤ)」 
祖父(父方)「ヤウ」祖父(母方)「ヤウタイ」
 祖母(父方)「プー(ポー)」祖母(母方)「タイ」
姉「ナーラオ(ニヤラオ)」兄「ティラオ」
妹「モア または ナフルア(ニヤルア)」弟「クゥー」
息子「トゥー」娘「ンツァイ」
これは何ですか?「ヌア ヨー ランチュー(コーノー ヨー アーチィー)」
あなたは誰ですか?「コー ヨー レンティゥー」
あなたの名前は何ですか?「コー ルー ベー フー リチャン」
私の名前はマイです「クー ルー ベー フー マイ」
こんにちは「ニョージョン(ニョーゾン)」
さようなら「モンオーまたはパイオー(モンラナー)」
ありがとう「ウア チャウ ダオ」 
どういたしまして「チー ウア チャン」
どこへ行きますか「モン ホー トゥー(モン コー ティゥー)」
遊びに行きます「モン ウア シュー」
あなたはどこに住んでいますか「コー ニョー コーティゥー(ホーティゥー)」
これはいくらですか?「ヌア プアチャウ(コーノー リーチャー)」
ご飯を食べる「ノー モー」
水を飲む「ハウ クレー(ハウ デー)」
お酒を飲む「ハウ チャウ」 
お腹がいっぱいです「チャオ ラウ」
豚「ブア」牛「ニュウ」犬「クレー(デー)」馬「ネン」
 鶏「カー(カーイ)」卵「カイ(ゲー)」 水牛「テュゥ」
暑い「クゥー」寒い「ノー」
美しい「ジョンガオ」 よい「ジョン」よくない「チージョン」

 なお、タイ語の親族呼称にも父方の祖母(ヤー)母方の祖母(ヤーイ)などの違いがあるように、モン族にも日本語にはあまりなじみのない複雑な親族呼称の区別がある。
たとえば妹を呼ぶ場合。兄が妹を呼ぶ場合は「モア」だが、姉が妹を呼ぶ場合は「ナルア(ニヤルア)」というように呼ぶ側の姓によっても呼称が変わる。
「恋人はもういますか?」と相手に聞く場合も、男性と女性では異なる。
相手が女性の場合は「プア タオ ムア フルアンジャオ」
相手が男性の場合は「プア タオ ムア フルアンガオ」
となるのでお間違えのないように。

(85号掲載)

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天使の言葉・ムラブリ語

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

84号 天使の言葉ムラブリ語1 タイ北部、ナーン県とプレー県に住む東南アジア最後の狩猟採集民族・ムラブリ族の言葉は、私がこれまでに耳にしたことのある数々の民族の言語の中で、もっとも美しい響きをもった言葉に思える。
 男も女も、全体のトーンが高く、特に語尾の部分を高音で長く伸ばし、やさしく歌うように、ささやきかけるように話す。ソプラノのピアニッシモという感じだ。私は、まだ実際のムラブリに会う前に彼らが家の中で会話しているのをテープに吹き込んだものを聞かせてもらったとき、家族で何か即興のミュージカルでも演じているのではないかと思ったほどだ。
 ムラブリの人たちは本当にやさしい。その穏やかな精神性は言葉にも表れている。こんなやさしいトーンで話されたら、喧嘩も戦争もはじまらないだろうし、子どもだって叱られた気分にはならないだろう。
 ムラブリ語は、オーストロアジア語族モン・クメール語派に属し、カムー族やルア族の言語と起源が近いといわれる。ナーン県とプレー県のムラブリ語には若干の違いがあるとも言われているが、以下はナーン県のムラブリの人々から聞き取ったもの。

1から10まで ムイ ベル ぺ ポン トン タール グル ティ ガイ ガル
私「オー」 あなた「メー」
お父さん「ムァム」お母さん「ムー」子ども 「オテーオ」
男「ヨーン」女「ウォーイ」
娘「エルゴード」息子「エルバーオ」
兄 「ディン」 弟 「ルーイ」
名前はなんですか? 「ブリ ティドー」
私の名前はトンです。「オブリー トン」
家 「ゲーン」
犬「ブラーン」猫「メーオ」豚 「チョブッ」水牛「クレー」
ご飯を食べる「ウォ ユー」
水を飲む「ウォ イウー」
酒を飲む「ウォ・ジラー」
おいしい「ジョーイ」または「ジョーシ」 
おいしくない「ケボ ジョーイ」
好き「マーク」嫌い「ケボ マーク」
 
ムラブリ語の否定語は「ボ」または「ケボ」 タイ北部方言やラオ語も否定語は「ボ」なので、否定詞はタイ語系の言語からの借用とも考えられる。

寒い 「タカッ」暑い「ホーン」
腹が痛い「モン プラム」
モン族の人「トゥルン ブア」
木「ムケー」森「ブリー」(「ムラブリ」は森の人の意味である)山「ユーウ」 
星「サモン」空「カンクゥ」
ヤマイモ「エー」米「ユゥ」とうもろこし「サロー」
パイナップル「ガナー」パパイヤ「チャフー」
どこへ行くのですか?「ジャカレーーン」
向こうへ行きます 「ジャグリー」
どこから来ましたか? 「リクレーーン」
遊びに行きます 「ジャグエーー」
さようなら 「オヤジャー」(もう帰りますの意)
今日「タルゴー」明日「ラーン」昨日「ネー」

84号 天使の言葉ムラブリ語2 ムラブリ語の話し手は現在、タイ国内に300人ほどしか残っていない。そしてこの数十年の間に、彼ら自身もタイの文化に同化しつつあり、借用語が増えて次第に独自の語彙を失いはじめている。若い世代は、ムラブリ同士の会話の中にもしばしばタイ語を交えるようになった。おそらく数十年内には、ムラブリ語はこの地上から永遠に消え去ってしまうのではないかと思う。このような美しい言語が消滅していくのは本当に惜しまれる。民族衣装や工芸品はそれを残してさえおけば、後世の人がいつかその技術を再現してみせることが可能かもしれない。しかし、言語だけは博物館に入れることができない。実際の生の話し手によってこそ初めて継承されていくものだからである。

(84号掲載)

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アカ語会話・入門篇

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

83号 アカ語会話入門編1 アカ族の女の子たちが話すのを聞いていると、たとえばタイ語やラフ語やリス語の話し手と比べ、半オクターブぐらいトーンが低くてドスがきいているというか、声質もダミ声といっては失礼だが、太くハスキーな感じがする。アカ族の人の声帯が独特なのか、あるいはアカ語の発音成分に濁音が多いから、そう聞こえるだけのかもしれない。たとえば「ご飯を食べる」は「ホザザ」、「遊びに行く」は「ドデガイ」といった具合で、日本語でいえばザ行、ガ行、ダ行などの音が多用される。
 アカ語はチベット・ビルマ語派イ語群に属する言葉で、ラフ語やリス語とも近い。文法は日本語と同じように言葉を並べればほぼ通じる。タイにはウロ・アカと呼ばれる支系とロミ・アカと呼ばれる支系が住んでいて、それぞれ発音や語彙に若干の違いがあるため、以下のカナ表記はあくまで参考程度にとどめておいていただきたい。

こんにちは「ウドゥタマ」
ありがとう「グラフマ」
どういたしまして「ティジェマガ」
私 「ガ」あなた「ノ」 彼「フェワ」または「アチョ」
あなたの名前はなんですか? 「ノ チョミョ アジェクレ」
私の名前はミムです。「ガ チョミョ ミム レクェ」
あなたは何歳ですか?「ノ アミャ コ コ ラエ」
どこの村に住んでいますか?「ノ アジェ プ ジョ エ」
この人は誰ですか? 「フガ アシュワ」
これはなんですか? 「フ アジェア」
どこへ行くのですが「アガ イエ」
遊びに行きます「ド デ ガ イ」
家に帰ります「イカン オ レ」
恋人はいますか? 「ノ ヤハ ボ ジョ マ ラ」
います「ジョマ」 いません「マボ」もしくは「マジョ」
妻がほしい「ガ ミヤ ラモニャ」
わかる、知っている「シニャ」 
知らない、わからない「マシニャ」
もうご飯を食べましたか「ホジャ マラ」 
まだです「マザアシ」
食べました「ザデマ」
水を飲む「イチュ ド」
酒を飲む「ジバ ド」
酒に酔う「ジバ イェウ」
お茶「ロボ」
食べたい「ザモニャ」
行きたい「イモニャ」または「レモニャ」
写真を撮る「モト トウ」または「ダボデ」
犬「アク」猫「アミー」豚「アヤ」鶏「ヤチ」牛「モネ」水牛「アニョ」馬「モン」
父「アダ」母「アマ」祖父「アボ」祖母「アピ」
娘「アブ」息子「アリ」
兄「アド」 姉「アユ」弟、妹「アニ」
若い娘さん「アチョミダ」若い男「アチョヤダ」
美しい、よい「ヨム」 美しくない「マム」
大きい「ヨフ」 小さい「ヨザ」
おいしい「ヨク」 まずい「マム」
寒い「ヨガガ」暑い「ヨササ」
家に入りなさい「イカン ラウ」
今日「イノ」明日「ニショ」あさって「サペ」きのう「ミノ」

83号 アカ語会話入門編2 これらの言葉は、先にも述べたとおり、腹に力をこめ、低音を効かせ、だみ声で決めるのがコツである。
 ちなみに、アカ族では「さようなら」の意味として「もう帰ります」という表現があるが、たとえば平地の村から山の村に帰るとき(「オレマデ」)と山の村から平地の町に帰るとき(「オイマデ」)とで表現が違う。現在いる地点よりも上の方向に帰る場合は「オレマ」、下の方向に帰る場合は「オイマ」なのだそうだ。さすがは山地に住んでいる人たち。では同じぐらいの高さにある村に帰る場合はどっちを使えばいいのかについては、聞きそびれた。が、それほど厳密に使い分けなければならないものでもないようだ。

(83号掲載)

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リス語会話基礎講座

カテゴリー: タイの山岳民族(三輪隆) | 2007.05.21 Monday

 

 リス族の女性たちは実に陽気で話し好き。もっと言ってしまえば、かなりのおしゃべりである。若い年頃の女の子たちは、来客を接待するときは、ちょっときわどいジョークや、お世辞などを盛り込んだリップサービスでもてなす。
 さて、リス語であるが、ラフ語と同じくチベット・ビルマ語派イ語群に属する言語で、文法は単純だが、発音はラフ語と比べるとやや手ごわいかもしれない。フランス語を思わせるような、喉の奥を震わせる独特の発音もある。否定語がマであることはラフ語、アカ語にも共通する。

82号 リス語会話基礎講座1はい 「グゥ」 いいえ 「マグヮ」
私 「グヮ」 あなた 「ヌゥ」 
彼(彼女)「ス」あるいは「イ」
これは何ですか? 「ティマ アシャ」
あなたは誰ですか 「ヌ アマ」
こんにちは 「コー クヮー」 
さようなら(もう帰ります) 「イジュ」
ありがとう 「アク ブモ」 
どういたしまして 「アシ モコ」
あなたの名前はなんですか? 「ヌ ミュ アレベ」 
私の名前はアレマです「グヮ ミュ アレマ べ」
どこへ行くのですか? 「アラ ジャ」 
遊びに行きます。 「ガベ イャ」
ご飯を食べる 「ザ ザ」 
水を飲む 「アジャ ド」 
酒を飲む 「ジプ ド」
お腹がすいた 「ザ ヒ ムア」
とてもおいしい 「アク ザミャ」 
まずい 「ザ マミ」
お腹いっぱいです 「ザ ブルュ」
あなたの歳はいくつですか? 「ヌ アミャ コ ゾア」
17歳です 「グヮ ツシュ コ ゾ」
1から10までの数え方 ティ ニ、サ、リ、グヮ チョ、シ、へ、クゥ、ツ
写真を撮る 「イプ ドゥァ」 
歌を歌う 「モコ グア」 
父 「ババ」 母 「ママ」 子ども 「ザニュ」 孫「リマ」
兄 「クゥクゥ」 姉 「チチ」 弟 「ニザ」 妹 「ニマ」
祖父 「アパ」 祖母(父方)「アザ」 祖母(母方)」「アプ」
夫 「ザグ」 妻 「ザム」
美しい 「ビヤ」 美しくない 「マビ」
豚「アヴェ」牛「アニ」馬「アム」鶏「アヤ」
犬「アナ」猫「アニャツ」魚「グヮ」
独身の男 「ザグレ」 独身の娘 「ザムレ」

 ところで、リス語には恋人という言葉がない。恋人という言葉がないということは恋人という概念が存在しないということである。すくなくとも伝統的なリス族の社会ではなかった。それはつまり、リス族の男女の間に「恋人」同士という状態が(少なくともかつては)存在しなかったということである。リス族の場合、男女の関係は、婚約期間中のごく一時期(数日から数週間)をのぞき、「恋人以前」の間柄であるか、結婚して完全な夫婦でになっているかのどちらかしかないのだ。恋人同士などという中途半端な存在は許されないのである。婚前交渉はおろか、結婚式以前に二人だけでデートすることだってできないのである。
82号 リス語会話基礎講座2 リス族では「私はあなたを愛している」というのを「グヮ ネ ニ ニュア」(これも直訳すれば「あなたがほしい」というようなストレートな意味)というが、これも伝統的なリス族社会ではほとんど使われることはなかったとのこと。リス族がプロポーズするときは、たいてい親戚の知り合いなどを間に介して、間接的に伝えるものだったからである。もちろん最近の若い人たちはこの限りではない。
 ちなみに相手が独身かどうかを聞くときにも、「もう恋人はいますか」とか「奥さんはいますか」というような聞き方はあまりせず、「ヌ ヒクヮ ゴア」(もうご家族はおもちですか)という聞き方をする。それを聞くだけで十分でなのである。結婚してさえいなければ、その人にひそかに想っている相手がいようといまいと、こっちはプロポーズの資格ありってことである。

(82号掲載)

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